パフューム __ 夏の甘い誘惑 (ページ12)

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# プレゼントページ12

『侑李ーっ、ごめんねっ、』

侑李「遅いんだけど」

『ご、ごめんって』

待ちくたびれたという顔で
わたしを睨む侑李。

正直、こわいです。

侑李「…誰、あの人」

『あの人…？』

侑李「さっき話してた男」

『あっ、有岡くんね！

同じ学校の人！
修学旅行のときに助けてもらったんだよね』

侑李「ふーん」

『なに、きいておいてその興味なさそうな返事は』

侑李「…なんでも」

ああ、これは
相当機嫌悪いみたいです

『…急に呼び出してどうしたの？』

侑李「ああ、…あのさ」

『ん？』

侑李「…これ」

『え？』

差し出されたのは上品な青いリボンでとめられている白い箱。

侑李「…あけてみて」

なに、この状況

結婚指輪を渡されるときの気分って
こんな感じなのかな…、

開けてみると
淡いピンク色の瓶が一つ。

侑李「香水買ってみたんだ。

これから、これつかってよ」

『…香水？』

なんで？？？

侑李「たまには香水新しく変えてみたらいいんじゃないかなって

…それに」

『…それに？』

侑李「…今の匂いも好きだけど

こっちの匂いの方が僕好きだし。」

『なに(笑)

侑李の好きな匂いになれと？(笑)』

侑李「…うん、そうしてほしい」

真っ直ぐな瞳が向けられて
侑李の瞳から離せなくなって
そのきれいな瞳に吸い寄せられそうで

思わず

『…たまにはいいかな』

なんて思った。

慧くんともしかしたら会えるかもしれない
そんな一心でずっと香水を変えずにいた。

だけどもう自分の中でわかってるんだ

慧くんとは
もしかしたらじゃなくて
もう会えないじゃないかって。

少しの可能性を信じて
アドレスも消さずに
香水も変えずに
ずっとずっとその時を待ってた。

わかってる、わかってる

だけど、

せめてあと少しだけでも

『…今の香水がきれたら

これ、使わせてもらうね』

慧くんのことを
想わせて。

侑李「…うん」

『でも…ありがとう

久々にプレゼントもらった気がする』

そうやって言って笑うと

侑李は切なそうな顔をして
何か言いたげだけど
それをこらえるかのように、

いつものように
口角を上げて

侑李「喜んでくれてよかった」

そう言って
さっきまでの機嫌悪かったのが
嘘のように微笑んだ。