Episode3 ルース ページ5
「喉乾いたからジュース買ってくる。俺を閉め出して寝るなよ」
「酷いなぁーそんなことしないよ笑」
「どうだか。」
「行ってらっしゃい」
炭酸を目当てに自動販売機に向かうと、今日から同じロシアチームのメンバーになったルース・カシムと鉢合わせた。
目が合うと驚いた様な顔をされる。
「そんなに驚くことか？」
「ごめん、考え事してて気が付かなくて…」
「決まってないなら先に買ってもいいか？」
「どうぞ」
ガタンッとジュースが取り出し口に
「ふーん…炭酸なんだ。コーヒーが好きなのかと」
「あれは長時間のミーティングの時だけだから別に好きって訳じゃないんだよ。どっちかっていうと甘いジュースの方が好きかな。糖質制限で量は決められてるけどね」
「そっか。」
そう話したきり、ルースは黙り込んでしまった。
何を考えているのか本当に掴めないやつだ。
練習施設は違ったものの、模擬試合の為に顔を合わせる時は度々あった。初対面での感想は、フロイ並に顔が整ってるやつだなってぐらいだったが改めて見てもイケメンの類に入るなと妙に納得する。
「明日の練習遅れるなよ。」
「うん。おやすみ」
ルース side
部屋に戻っていくユーリの背中を見送ってから、オレンジソーダのボタンに手を伸ばす。出てきたボトルはこれ以上ないほど冷えきっていた。飲んでみるとすっきりとした甘さが喉に広がった。
「あま……」
施設練習生の頃から好意を寄せていたユーリにどうにか近づきたいと思っていたところに舞い込んだロシア代表選手の話は僕にとって都合が良かった。シャワー上がりなのだろう、自動販売機の前で会ったユーリは支給された部屋着を着ていて、ふわりとシャンプーの香りがした。
(やっぱり可愛いなぁ…)
初めて見た時はその容姿から男とは思えなかったが、今は性別なんてどうでもいい。彼を見る度に胸が熱くなって、心臓が高鳴る。間違いなく恋だった。
一人部屋の壁にもたれ掛かり、宙に向かって呟く。
「やっと会えた。」
「絶対に君を手に入れてみせる……」
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作者名：てるみん | 作成日時：2020年5月4日 1時
