白百合の少女 (ページ19)

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Episode17 幇助ページ19

日本との対戦を目前に控え、ロシアチームでは最後の調整が行われていた。イナズマジャパンのプレイスタイルや選手データを分析し、スターティングメンバーでどの選手が出場しても対応出来るように何パターンも選手構成を組んでいく。
ユーリはフロイとのツートップでフォワードにいる機会が多かったが、FFIのエキシビションマッチの時のようにゴールキーパーで出場することも少なくはなかった。
普段のメインキーパーのゴランも実力は充分だが、点を許してしまう場面も度々見受けられた為、大切な試合の時はユーリがキーパーを任されていた。

ベルナルドから言い渡されたのは点差を問わない完全な勝利。
日本は反オリオンであり、スペインに並んでオリオンの使徒を排除する動きが活発だった為、ここで1つお灸を据えてやろうとでもいうのだろう。
より一層緊張が走る中で、フロイだけは目を輝かせて活き活きとしていた。

「ジャパンとの試合凄く楽しみだよ！ノサカとヒカルの戦術もどんなものか見てみたいし！」

イナズマジャパンにオリオンの使徒として送り込まれた一星は、予選の段階で解離性同一性障害を完治させ、その後ノサカの元で参謀として実力を発揮していた。オリオンの練習生として共にサッカーをしていた一星充が故人であったなどと、フロイも私も思いもよらなかったのだ。
サウジアラビア戦後にベルナルド様から詳細を聞かされて帰ってきたフロイは部屋に帰るなり突如泣き出して、ポツリ…ポツリと一星について後悔の念を吐き出した。

"ミツルはミツルじゃ無かったんだ"

"僕は近くにいたのに何も気がつけなかった。親友失格だ"

しばらく落ち込んでいたフロイは、アジア予選決勝を観てから吹っ切れたように練習に明け暮れていた。日本との試合を1番楽しみにしていたのもフロイだった。

「絶対勝つよ！僕たちの実力を見せてあげよう！」

緊張など無くなったかのようにその場にいた全員がフロイの言葉に呼応した。
ああ、このまま楽しい試合を続けられたら良かったのに。まだ何も知らずに湧き上がるチームメイト達をよそに、ユーリ1人だけが後ろめたい気持ちを抱えたまま固く拳を握りしめていた。