キンピラ ページ10
バンバンバンバンと壊れそうなくらい戸を叩かれる。 もしかして、またあの大食いが来たのかもしれないな、なんて思って無視をしていると、音がやんだ。 あれれ、からかっただけなのに。 その瞬間、台風のときに戸が飛ばされたときと同じような音がした。 要するに破壊音。
りりんっと音を鳴らして猫が寄ってきた。それと同時にごつごつとした足音も近付いてきた。
これはもしかして大食いじゃなくて空き巣かもしれない。 そんな予感さえしたが、足音はこの部屋に入る前に止まり、見たことがあるような緑色の服の袖がみえた。と、ぱさん。 いつか私が無くしたと思っていたハンカチがおちた。
「あの亡者が持っていた。返しに」
それだけを静かにつげるとごつごつと足音は通り過ぎていく。 知らない間に体が動き、ハンカチを持ってきた人を追いかけていた。
「ちょ、ちょっとまって」
「何か用か」
歩きが相当速かったので呼び止めると、その人は律儀に歩きを止め振り向いた。 眼の青い男性だった。でも青とだけでは言い表せないような、深く深く潜った海の。
「お礼なんだけど、今夜、家肉じゃがなの。多めに作っちゃったから詰めて渡すわ。 お仲間さんと食べて」
「…ハンカチのか?」
「それもあるんだけど、あの男の子から助けてもらったお礼というか…」
「それは俺たちの仕事だ。 礼を言われるようなことではない」
「じゃあハンカチのお礼。 少し待ってて」
話すときは相手の眼を見なさいなんて言われるけれど、逆にあの人のように凝視されると怖い。彼は玄関で突っ立って待っている。 走って台所へ行き、鍋に入った肉じゃがを容器へいれ蓋をする。 それを引っ張り出したビニール袋へ入れ、また来た道を戻る。
彼は玄関の靴箱の上に飾ってある物を眺めていた。
「待たせてごめんなさい。 これなんだけど、良かったらでいいの。人間が作った物なんて食べちゃいけなかったら捨てて」
「食物を粗末にするなと教わったが?」
「それもそうね。じゃあ、残さないでね。 押し付けがましいかもしれないけど」
「これは…、お前か」
ビニール袋を受け取った彼が遠慮がちに声を小さくして問いかけてきた。
目線の先を見ると、昔かぞくで撮った写真を飾った写真立て。写真には母、父、犬が写っている。
「ええ。 この頃から捻くれた子供だったのよ、私」
彼が黙ったのでそちらを向くと、私の左側を凝視し、「…それでか」 と呟いた。 なんだか聞くとろくなことがないような気がして私も黙った。
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おりょうり(プロフ) - 亜鉛さん» 初めまして。最後までお付き合いありがとうございました。続きまで期待してくださりありがとうございます。ボチボチ頑張りますのでよろしくお願いします。本当にありがとうございました! (2015年9月4日 23時) (レス) id: 4a266f676d (このIDを非表示/違反報告)
おりょうり(プロフ) - Cm@すたーしょこらさん» 最後までお付き合いありがとうございました! 煮詰まったり展開に悩んだりしたのですが完結できて良かったです。本当にありがとうございました。 (2015年9月4日 23時) (レス) id: 4a266f676d (このIDを非表示/違反報告)
亜鉛 - 続き、出来たら見ます!楽しみにしてますね!まぁ、無理にとは言いませんけどね。気長に待ってます! (2015年9月4日 22時) (レス) id: 80557561c9 (このIDを非表示/違反報告)
Cm@すたーしょこら(プロフ) - ご馳走様でした。終わってしまうのはとても惜しいですが、読んでいてとても楽しかったです。 (2015年9月2日 22時) (レス) id: 9b965d834a (このIDを非表示/違反報告)
おりょうり(プロフ) - マミむめもさん» マミむめもさん、コメントありがとうございます。 完全に私個人が食べたいメニューとなっております。 これからも更新頑張らせていただくのでよろしくお願いします。 (2015年8月9日 19時) (レス) id: 4a266f676d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おりょうり | 作成日時:2015年8月2日 21時