ハンバーグ ページ31
「謝る?」
「そ、う。あの子、にこれ渡さなきゃいけ、な」
「出しゃばってんじゃねえぞ」
キッと睨まれる。私に対してこれっぽっちも興味を持っていない眼で。
「お前がなんだか知んねえけどな、足引っ張ってんじゃねえ。ただでさえお前は大荷物だ」
「嫌。出しゃばるわ。言葉でも行動でも」
「はっ、好きにしろ。ただしもうこれ以上関わってくるな」
そう言うとスタスタと仲間の元へと歩いて行ってしまった。分かっている。自分が大荷物どころか粗大ゴミ以下のようなものだということなど。それでもあの子には謝らなければいけない。
鶴の折り方を教えてもらった。その子に毎日鶴をあげていた。それだけだ。その子は引っ越してしまう前日に、私に鶴をくれた。「忘れないでね」と。
すっかり忘れていた。そのことを謝らなければいけない。
よろっと立ち上がる。もう十分に動ける。
「おーっしゃぁー!」
「平腹ぁああ! ストップ!!」
「あ、Aさんいいところに」
私の横をものすごい速さで駆け抜けるものがひとつ、それにしがみついて止めようとしているものがひとつ。そして私を呼ぶのがひとつ。
「よし、斬島たち上手くやってる」
「木舌さん、悪いんだけど鶴をくれない?」
「ん? いいよ。何か思いついたんだね」
「ええ。もう、大丈夫」
「そっか。じゃあ、頑張って」
にこりと送り出され、影から出る。後ろから木舌さんもついて来るが、これでは意味がない。
深呼吸をする。深く、深く。
「さきちゃん、鶴」
いつも、言っていた言葉。 遠くにいる彼女が眼を見開くのがわかった。
「あのね、さきちゃん。いつもあげててた鶴、お手紙になってたのよ? 気付いてた?」
ゆっくり、こちらに近づいて来る。彼らはこちらを見ている。
「…遅いっ!」
びゅんっと、飛んでくるはずだったガラス片はオレンジ色の目が撃ち落とした。
「さきちゃん、あのね、鶴」
「…、忘れてたんでしょう」
もう距離は全くない。しっかりと彼女を見る。なんだ。変わっていない。
「ええ。だって貴女、私のお手紙読んでないでしょう?」
ぼろぼろと、差し出した鶴に水玉模様が浮かぶ。
「貴女だって読んでないでしょ? 最後にあげた鶴の手紙」
「じゃあ私たち同じね」
そう言うと手に持っていた鶴が黒く染まっていった。
「ごめんね、ありがとう。ひとつ聞いてもいいかしら」
ぐずぐずと鶴が崩れる。
「私は何をしてたの?」
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おりょうり(プロフ) - 亜鉛さん» 初めまして。最後までお付き合いありがとうございました。続きまで期待してくださりありがとうございます。ボチボチ頑張りますのでよろしくお願いします。本当にありがとうございました! (2015年9月4日 23時) (レス) id: 4a266f676d (このIDを非表示/違反報告)
おりょうり(プロフ) - Cm@すたーしょこらさん» 最後までお付き合いありがとうございました! 煮詰まったり展開に悩んだりしたのですが完結できて良かったです。本当にありがとうございました。 (2015年9月4日 23時) (レス) id: 4a266f676d (このIDを非表示/違反報告)
亜鉛 - 続き、出来たら見ます!楽しみにしてますね!まぁ、無理にとは言いませんけどね。気長に待ってます! (2015年9月4日 22時) (レス) id: 80557561c9 (このIDを非表示/違反報告)
Cm@すたーしょこら(プロフ) - ご馳走様でした。終わってしまうのはとても惜しいですが、読んでいてとても楽しかったです。 (2015年9月2日 22時) (レス) id: 9b965d834a (このIDを非表示/違反報告)
おりょうり(プロフ) - マミむめもさん» マミむめもさん、コメントありがとうございます。 完全に私個人が食べたいメニューとなっております。 これからも更新頑張らせていただくのでよろしくお願いします。 (2015年8月9日 19時) (レス) id: 4a266f676d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おりょうり | 作成日時:2015年8月2日 21時