8,骨の髄までヲタク ページ9
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戸籍とか職場有無の心配よりも先にゲームがあるかについて行き当たってしまったのは、随分間が抜けているというか、頭のネジが一本抜けているというか。しかし仕方あるまい?何せこの数年私の生きる糧として生死を真横で支えてきてくれた、いわば運命共同体だ。死活問題である。
ちなみに戸籍は存在しており、職場は前の所とは違うがあるにはあった。今は有給消化で四日程休みを取っていることになっているらしい。
いやんなこたどーでもええんや。とうらぶ無いのが大事やろ。
この先私はどうやって生きていけばいいんだ……と真剣に考え出した。端から見ればえらく滑稽である。私から見れば自然な事だ。
「あ、そうだ」
ふと、推し刀の名前を検索にかけてみようと思い立った。この世界の主人公工藤新一くんもとい江戸川コナンくんが尊敬してやまないシャーロックホームズは私の世界に実在した作家、コナンドイルが生み出したキャラクターであった。だとすれば、とうらぶはないにしても刀自体はあるのでは……そう思ったのである。
「…………ぁ、ある!あるぞ!我が推しはどの世界にも存在しているんだ……!」
かくして、検索にひっかかった。存在していたのだ。大包平……!やはり君は素晴らしい!古備前繋がりの鶯丸や、そこからシラノ刀で髭切と膝丸という源氏、平氏の小烏丸、粟田口、左文字、三条……他の刀も思い付く限りあげて検索をかけると、余すことなくどれもこれも存在している。勿論ゲームはないので、キャラクターのイラストはこれっぽっちもないが、それでも本体があれば私は幾らでも愛でられる。
もう一度推しの名前を入力して下のほうまでスクロールしていくと、見逃せない情報が目に入った。
少し前から、この県のある博物館で大包平含め有名な刀の展示が始まっているというのだ。
「な、なんだと……!?今展示会の真っ最中だなんて……。これは行くしかないな」
ここは大人のヲタクのフットワークの軽さを本領発揮するとこだな。
そうして、いつしか私は内容をよく知らない漫画の中にトリップしてしまった事をそっちのけで、明日の行程を立てるのに手をつけ始めたのだった。
全ては、愛する推しの為である。
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作者名:dear | 作成日時:2020年3月10日 2時