検索窓
今日:16 hit、昨日:33 hit、合計:48,908 hit

10話 ページ11

あの日から数日が経った。
葬儀だったり引っ越しだったりとバタバタした日々が続いた。
もうA君は退院して学校に来ているらしいがめっきり見なくなった。
放課後、葵さんを迎えに来ることもなくなった。

葵さん曰く「最近忙しいらしいの」とのこと。

休み時間、隣のクラスを覗いてみてもA君を見つけることは出来なかった。





だがある日校舎裏の木の影で仮眠をとっているA君を偶然見つけた。


高明「…こんなところで寝てると風邪ひきますよ。」


そう声をかけると彼は目を開いた。
真っ直ぐとこちらを見上げるヘーゼルの彼の瞳。
しかし左目は以前と違いグレーの瞳に変わっていた。


高明「これ、…あの日の怪我のせいですよね。」


そう言って彼の目元にそっと触れる。
A君は少し眉を顰め僕の手を掴み起き上がった。

…馴れ馴れしかっただろうか。


高明「…すみません。」


『…お前は人のことばかりだな。あの後ちゃんと泣けたのか?』

高明「え?」

『平気なふりして気丈に振る舞って…』


A君はそう言って僕の頬に手を伸ばし優しく撫でた。


『弟を不安にさせないようにしてたんじゃないのか?』


優しく目を細め『まぁ、俺の勝手な想像だけど。』と笑った。


彼の言う通りだ。
幼い景光の方が辛く悲しいだろうと
自分の気持ちを押し殺し耐えてきた。
震える体を隠し景光を抱きしめていた。
親戚の方に迷惑をかけないように心がけてきた。

…あぁ、そうか。
父と母が死んでからまだ1度も泣いていなかったのか…



『ここには俺以外誰もいないんだし…もう我慢しなくていいんじゃないか?』

高明「…っ」


気付けば何かの糸がプツリと切れたように目頭が熱くなり涙が零れそうになっていた。

それを見られたくなくて勢いよくA君を抱きしめた。

1度溢れ出した涙。
もう止められない。

…あぁ、やっと泣けた。


彼は何を言うでもなくそっと抱き締め返してくれた。

11話→←9話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (77 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
184人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

もん(mon)(プロフ) - Excuse meさん» すみません!友達が使いたいと言っているのでこちらの作品はご遠慮ください…>_< (2023年1月31日 13時) (レス) id: 1f4439cdc8 (このIDを非表示/違反報告)
Excuse me(プロフ) - pixivで書いてもよろしいでしょうか?主人公の名前、タイトル変えます (2023年1月31日 12時) (レス) id: 880b7bddc6 (このIDを非表示/違反報告)
山さん - 好きぇぇぇぇぇぇえす!!!!!高明さん可愛いひろ可愛いみんな可愛いご馳走様です更新楽しみにしています(( (2023年1月27日 14時) (レス) id: df5dd681a2 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - はじめまして。面白いです。主人公君と諸伏警部の絡み最高です。主人公君と長野県警組の絡み面白いです。 (2023年1月13日 16時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
深夜 - 絵は自分で書いたのですか? この主人公のCVは島崎信長さんかな? (2023年1月12日 19時) (レス) @page1 id: 880b7bddc6 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:もん(mon) | 作成日時:2023年1月3日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。