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｢それは鍵を掛けられてやること？｣
｢大倉、ちょっと。こっち。｣
｢こっちじゃない。今はAに聞いてねん｣
自分の体温が下がってくるのがわかる。
落ち着いたわけじゃない。
ただこれ以上爆発させないために、がんばって自制をきかせてるだけだ。
だから俺は渋谷先生の制止を振り切って、怯えきった顔をする彼女の前に仁王立ちする。
｢せ、先生に用事があったんじゃないの？ それに鍵かかってたからって何があった訳じゃないよ｣
なにこの期に及んで言い訳なんてしてるの？
今ならこの2人が何をしようが何を言おうが全てが地雷になる。
そのとき、逆に冷静になって客観的に見れてしまっている俺にとって、たぶん1番見てはいけないものを見てしまった。
『Q. 渋谷先生は佐藤Aのことが好きなのか。』
Aっぽい華奢な字で書かれた質問の下には、黒板上で頻繁に見かける癖のある丸い字。
『ただし、条件として佐藤Aから渋谷先生にキスをした場合のみ答えるものとする。』
｢A。出るよ。｣
あんな質問、答えなんて書かなくてもわかる。知ってる。
なんで？Aはなんで平気で襲われてるん？
見たのが俺じゃなかったらどうしてた？他の先生だったら？全然関係の無い生徒だったら？
わからない。わからないわからない。
俺に告白してくれたAはどこいった。
俺が好きなAは＿＿＿
俺の報われない気持ちを込めて、それでもAの体には傷が付かないように、彼女を家庭科室の壁に叩きつけた。
｢何してんねんA｣
初めて正面からはっきりAの顔を見る。
今までに見たことのない、完全に怯えきった彼女の瞳。
でもその中に、少しの驚きの色が足されたようにも見えた。
｢渋谷先生とキスしたん？｣
｢え…？｣
今度はすっとぼけるのか、お前は。
反動で少し涙が滲んだ。
｢書いてたよね？ あのプリントに｣
｢＿＿……した｣
それでもまっすぐに、彼女は僕に向き直った。
………俺の気も知らないで。
俺の方が見ていられなくなって、思わず視線が下がる。
｢どういうことかわかってる…？ バレたら二人とも追放やで？ Aだってこの学校にいられなくなる。社会的に殺される。｣
｢うん。｣
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作者名：吉田マーメイド | 作成日時：2018年6月12日 23時
