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Aによる毎朝のおはようのバリエーションが増え始めた頃、俺はあることに気がついた。
Aは最初は2.3人の女子としか話していなかったはずなのに、明らかにその顔ぶれが増えているということ。
それと同時に、俺と話すようになった女子も増えていった。
｢ねえAちゃん、宿題やった？｣
｢やってない！ わかんないもん｣
｢Aがやってきてることなんてあった？｣
｢失礼な！！ あるってば3回くらいは！！｣
｢3回って自慢できないから！笑 大倉くんいつもAちゃんに見せてるの？｣
｢おん。ししゃもくれるから。｣
俺とAが2人で喋ってるときに女子が割って入ってきて、なんだかんだで大勢で喋ることになる。
楽しいは楽しいし、AもAで友達ができたことを純粋に喜んでるみたいだった。
でも、2人の会話が減ったのはやっぱり寂しい。
授業前の時間でしか喋れない。
それに…今までは俺にじゃなきゃ突っ込んだりしなかった彼女が、女子とじゃれあってるのを見るのが少し気に食わなかったのは否定出来ない。
その頃にはすでに芽生えていた独占欲に、きっとずっと気づいていなかった。
『山崎のハゲが拡大してる気がする』
数学の時間に彼女がすっと俺の手に握らせてきた小さなメモ用紙を見て、必死で笑いをこらえる。
『もうバーコード読み取れないんちゃう？』
彼女のきれいな字の下に書いて返却すると、せっかく俺が笑いをこらえてたのに隣から勢いよく吹き出す声が聞こえて俺も鼻がなる。
｢何笑ってんだ授業中だぞー｣
｢す、すみませ…っ笑｣
笑いながら形だけ謝る彼女の腕を肘で小突くと、また笑いながら｢ごめん…笑｣と小さな謝罪がくる。
そう。こういう時間が楽しい。
2人だけで笑いあえてる時間が、2人にしかわからない世界が出来てるのが、純粋に嬉しい。
何よりも、俺が喋りかけたときの彼女の笑顔を見ればああ同じ気持ちなんだとわかることができた。
｢わたしさ、イニシエーションラブの映画見たいんだよね
原作ファンとしては見とかなきゃなっていう｣
｢え、俺も見たいそれ｣
今思えば、このときの彼女を見て何も察しない男なんていないに等しい。
明らかに目を泳がせて、机の下でぎゅっと拳を握りしめた彼女は上目遣いで言った。
｢一緒に…見に行く？｣
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作者名：吉田マーメイド | 作成日時：2018年6月12日 23時
