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なんて誤魔化そうかと考え始めたとき、すでにドアのところで立っていたAは俺の目をじっと見つめてきた。
あまりにも長く見つめてくるから恥ずかしくなって、俺はAに背を向けて重い玄関のドアを開けた。
｢なにぼーっとしてんの？ 行くで｣
こっちばっかり恥ずかしい思いさせやがって。
仕返しとばかりにAの顔にぐっと迫って覗き込むと、Aは目が覚めたかのように俺に笑いかけた。
＿＿＿
｢なんか、わたし次寝たらゴートゥーホテルらしい｣
｢渋谷先生ってさ、下ネタ言うタイプだったっけ？｣
突然変なこと言い出したなと思ったらこれだ。
あんのチビセクハラ親父。
女子人気急降下するぞ。
｢ありすちゃん卒業しちゃうかもなー｣
｢やめて笑 モンスター飲んどけって笑｣
ほんとに冗談でもキツいから。
考えたくもないから。Aが他の男と寝るなんて。
だったら多少体に悪くても、エナジードリンクに頼ってほしいのが本望だ。
勝手に自分の中で本気になってイライラしていたとき、とん、と軽くAの肩が俺の二の腕にぶつかった。
Aを見下ろすと、それはどうやら故意によるものらしく。
｢……聞いてくれよォ大倉ァ｣
｢なんやねん急に酔っ払いのおじさんみたいになって｣
｢おじさんのめんどくさい絡みを受け止めてー｣
いつもそうだよね。
Aは何か聞いてほしいことがあるとき、あざとく肩を擦り寄せてくる。
俺のこと好きでもないくせにそんなことすんなって、言ってみたいけどこういうことされたいのは事実。
最近あのケバい2人と上手くいってなさそうだったもんな。
甘え上手な想い人の頭を撫でるのが、きっと俺のできる精一杯だ。
そしてこういうときにいつも行くミスドでコーヒーを飲みながら彼女の愚痴を聞くことが。
｢最近あの二人と上手くいってる？｣
俺の方から話を振ってみると、Aは汁そばをすすりながらうーんと唸った。
｢……仲悪いわけではないんだけどねぇ、なんだろ……｣
Aにあの二人は合わない。
本人は本能的にそれを理解しながら、Aはあの二人しか友達がいない(俺は学校では他人として扱われている)状況に洗脳されている感じがした。
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作者名：吉田マーメイド | 作成日時：2018年6月12日 23時
