愛に溺れろ【伏黒恵】 ページ22
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「 よかった、恵と合同任務で。 」
「 …ああ、そうだな。 」
残暑の残る8月終わり。
私がホッとしているのは、海での任務だったからだ。
生粋のカナヅチである私は深いプールであろうが浅い海であろうが怖いのだ。
「 お盆を迎えた海は危険だと言う人の心理はあんまり理解できないなあ。元々海入らないし。 」
「 A、刺身好きだろ。 」
「 え、いやそう言う問題じゃ…。 」
まあとにかく、と時間もかからなかった任務を終えた私たち二人はもう遠く感じる駐車場に待つ補助監督さんの元へ。
だが、高専に来てまともに夏休みを迎えていない恵は少し海が気になるらしい。
「 少し、いいか? 」
「 あ、うん。構わないよ、私は先行ってるよ。 」
「 …いや、Aも来いよ。 」
「 エッ、あ、ハイ。 」
珍しく誘ってきた恵を断れず、波打ち際までついていく。
押し引く波の音と風に吹かれて私の鼻を掠める潮の香り。空の青は好きだ。だけれど海の青さは怖い。
「 何でそんなに難しい顔してるんだよ。 」
「 !あれ、そんな顔してた?ごめんごめん。 」
無意識に顔に出ていたのか、心配そうな恵。
長い睫毛に日に焼けない白い肌。ずっと見ていられた。
だが、それを遮るように恵は私の手を取って歩き出した。
「 は、え、ちょどこいくの? 」
手を引かれる。
ローファーも履いて制服も着ているのにも関わらず海に入っていく。
拒もうと足を止めようとも、恵の引っ張る力は強く尚且つ膝まできている波のせいで止まれない。
「 ねえっ、恵ッ!ねえってば! 」
必死の叫びも届いていないのか、どんどん深くなっていく海を進んでいく。
「 …海は怖いか? 」
「 こっ、怖いに決まってるじゃん!私、泳げないのよ!こんな深くまできてもう震え止まらないの! 」
泳ぎに来ればそんなに深いとは感じないところでも、私はもう限界だった。
お腹あたりをプカプカとする波にうまく立っていられない。
「 そうか。それは悪かった。けど、もう戻らない。 」
「 …どうしたの?さっきからおかしいよ? 」
「 知ってるか?溺愛って、愛に溺れるって書くんだ。 」
「 …それが、なに。 」
嫌な予感がした、
ゴボッ
「 んんッ 」
いつも優しく撫でてくれた手は私の頭を掴み水面に押し付けた。
息ができず、もがく。
「 溺れさせてやるよ。俺はお前が好きだ。 」
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麦芽糖(プロフ) - 音朱(おとあ)さん» コメントありがとうございます。楽しみにしてくださる読者様がいて嬉しい限りです!今後もお楽しみください! (2021年2月13日 16時) (レス) id: 590a187e25 (このIDを非表示/違反報告)
音朱(おとあ)(プロフ) - 初コメ失礼します…!狗巻君の梅を読んで「そういうこと!?天才か!?」と思い以前お気に入りしましたが、梅と同じくらいドストライクの物がどんどん更新されて凄く嬉しいし、いつも楽しみに見てます!これからも更新頑張ってください&よろしくお願いします…! (2021年2月13日 14時) (レス) id: b1bca41b54 (このIDを非表示/違反報告)
麦芽糖(プロフ) - おみさん» ありがとうございます!以前書いていて消してしまったのですが、私の中であの場面が一応最終話の予定でした汗 また機会があれば一作品にして残そうと思います!貴重なご意見ありがとうございます。 (2021年2月13日 10時) (レス) id: 590a187e25 (このIDを非表示/違反報告)
おみ - 孕み愛の、長編を読んでみたいです!! (2021年2月13日 0時) (レス) id: 1d8ea5bb37 (このIDを非表示/違反報告)
麦芽糖(プロフ) - マリイさん» 頂いたリクエスト、私の文章力ではマリイ様のご期待通りにできる自信はありません。申し訳ありませんが、お受けすることはできません。申し訳ありません! (2021年2月12日 22時) (レス) id: 590a187e25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:麦芽糖 x他1人 | 作成日時:2021年2月10日 13時