奈落の底へ【五条悟】 ページ20
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「 はあッ、はっ、はあッ! 」
私は今何者かに追われている。
仕事帰りのOL、尚且つハイヒールでスカートと無理難題な状況の中で会社からぶっ通しで走ってきている。
電車に乗れば確実に降りる駅までついてこられるし、バスでも同様。
だからと言って家までこのまま走り続けるのは厳しいものである。
酔っ払いの飲んだくれにぶつかりそうになったり、ゆっくり歩くカップルを押し退けたりして20分ほど走ってきた。
さすがの私も限界だった。
「 あ、あのマンションなら…。 」
見知らぬ古びたマンションに駆けた。
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がつがつ、と非常階段を上がり、なるべく上まで上がって不審者をまいた所でエレベーターに乗る算段だった。
相手は一瞬見た限り背が高く細身で黒ずくめ。顔や髪などは暗くてよく見えなかったが、とにかく怖そうだ。
「 はあ、はあって、ここまでくれば、もう大丈夫でしょ。 」
響きやすい非常階段の扉の前で座り込んで、息を整えれば、自分の息の音以外聞こえてこない。
もう追ってきていないのか?
腕時計を見てみれば、短針はもう既に11を指していた。
終電に間に合いますように、と私はエレベーターがありそうな方向へ向かった。
「 それにしても何だったの。嫌がらせ? 」
降りるボタンを押して、エレベーターが来るのをゆっくり待つ。階が表示される電子板を見れば順調に下がってきていた。
この流れに乗って私も下へ降りてやっと帰れるんだとホッとしていた。
チン、古ぼけた音と共に扉が開く。
中には男の人一人。
軽く会釈をしながら、狭いエレベーター内に足を踏み入れる。
「 ? 」
だが、男性はボタンを押さず下へ降りようとはしなかった。
「 …あ、あの、すみません一階押してもらってもいいですか? 」
「 ああ、そうだね。降りないといけないもんね。 」
「 え、? 」
サングラスをかけた白髪の男は、ボタンを押さずに私の方へと振り返った。
年季の入ったエレベーター内は少し動けば揺れて、怖さから身動きが取れなかった。
「 もう君ってば逃げ足もはやいし、中々捕まらなかったの本当に疲れたよ。
ま、おかげで鬼ごっこは楽しかったけどね。 」
「 な、なにいって。 」
頭の中ではこの人が私を追ってきていた不審者だと分かっていた。
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麦芽糖(プロフ) - 舞香さん» ありがとうございます!更新頑張りますのでこれからもよろしくお願いします! (2021年2月17日 9時) (レス) id: 590a187e25 (このIDを非表示/違反報告)
舞香(プロフ) - め、めちゃくちゃ好きです……!こういうのを求めてました…!これからも頑張ってください、応援してます!! (2021年2月16日 21時) (レス) id: 26fd9ad117 (このIDを非表示/違反報告)
麦芽糖(プロフ) - yuunaさん» リクエストありがとうございます。また書けそうでしたら書きますので、しばらくはリクエスト停止させていただきます。いつも読んでくださりありがとうございます(^^) (2021年2月16日 19時) (レス) id: 590a187e25 (このIDを非表示/違反報告)
yuuna(プロフ) - とても面白かったです!またリクエスト失礼します!高専五条がメンヘラで一般人夢主が文ストの太宰治みたいな性格で浮気性なのが見てみたいです!! (2021年2月16日 19時) (レス) id: a73b6209c2 (このIDを非表示/違反報告)
マリイ - ナナミンがメンヘラ見たいです (2021年2月15日 16時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:麦芽糖 x他1人 | 作成日時:2021年2月15日 7時