#258 ページ9
スイッチが切り替わったように途端、物凄く嫌になった。頑張ること、我慢すること、気を配ること、笑顔を作ること。億劫になった。狂いそうになる自分を抑えるように、深呼吸しても。
「今日の仕事は〜」この場に及んで耳障りな声で大嫌いな話をされる。
耐えられない、＿＿＿＿
何かのリミッターが外れたように携帯をマネージャーに投げつけて。地面に叩きつけられた携帯は、無惨にも破損した。
壊れればいい、私のようにね。
「…、(人1)さん！＿＿＿＿__チッ」
「追いかけなくていいんですか？！」
「……いい。これだから日本のタレントは扱いづらいんだ。後で社長に報告しよう」
縛られた社内のルールが嫌なわけじゃない。私にも心があるのにぞんざいに扱われて。操り人形のように弄ばれ、人間味を消されていく。
残るのは抜け殻だけ。
＿＿＿＿そんな自分になりたくなかったから。残りの希望を失わない為に逃げた。がむしゃらに走った。
会社から飛び出した後は、適当なタクシーを拾って。一刻も早くここから逃げ出したいあまり、
『海に連れてって下さい』
焦りながら口にした、ざっくりした場所。勿論運転手は困ってしまっていたが、
誰にも見つからない海に連れてってほしい、と言えば。穴場スポットがあると自信ありげに車を走らせた。
「お姉さん、海に何しに行くんです？」
『……現実逃避。……いいえ、ただ海が好きなんです』
「そうなんですか。……」
日本に帰ろう、と真っ先に思ったけど。パスポートは会社に預けられてるし。逃げ場は国内しかない。
驚く事に全ての仕事を投げ出した罪悪感は全くなかった。
『…ありがとうございます』
まだ日が高い、大きな岩場の影に隠れてみると小さなカニを数匹みつけた。
子供心に手を伸ばしてみても捕まえる度胸もなく。穏やかにゆっくりとした時間は流れ続ける。
砂や水に触れて自然の空気を吸って、
海のさざ波に打たれながら。静かに涙が伝っていた。
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chay(プロフ) - エリサさん» コメントありがとうございます。パスワードを外しましたよで、是非ご覧なって見てください。ありがとうございます。 (2022年1月21日 14時) (
レス) id: 78cfebea7b (このIDを非表示/違反報告)
エリサ(プロフ) - ものすごい物語に出会ってしまったと深夜にも関わらず、一気に読みました！面白かったです。ぜひ続編のパスワードを教えて頂きたいです。 (2022年1月19日 2時) (レス) id: 3441eb251e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：chay | 作成日時：2022年1月4日 8時
