#291 ページ42
もう少し、あと少し。＿＿＿＿
携帯を抱えながら、ずっと鳴りやまない着信をただ眺めているだけに見えて。自分の勇気と戦ってるんだ。
でもマネージャーや周囲の警戒からテヒョンと私が接近することもないように、気を配ってくれるのは分かってる。
今私が消えたら、より混乱してそれどころじゃなくなることも分かってる。
心配させないような顔の火照りも改善されたし、意を決してトイレから出てマネージャーの着信に出る、その時。
…ドンッ！
びくっと体が震えた。突然行き場を塞ぐように現れた彼は私を見下ろして。
『…っ、は、…っえ！』
何も発することもなく、きつく掴まれた腕は私を男子トイレへと誘導していく。
相変わらず無鉄砲。躊躇いもない、その行動は私を驚かせては頬が赤くなって。元気だった？って一言ぐらい会話があってもいいのに。見ない数ヶ月の間に、私は彼に何かしたかな？
全く笑顔もない彼に愛想笑いもできない。ただの友達という言い訳も通用しないことに気づいた。
「……やっと会えたね。」
『……』
そんな私と正反対。突拍子もなく動揺を見せない彼。過去に私達に起こった揉め事全てを忘れたような清々しい顔して。時間と共に忘れてしまったなんて許せない。
あれから、どれだけ貴方のせいで仕事がやりづらかったか、憎らしいと思ったことも山ほどあるし、別れて良かったと思った瞬間もあった。
それなのに私は矛盾してるよね。海の底まで一緒に居たいとテヒョンを呼んで、全てを失いかけた瞬間に求めたのが彼だった。
私の方がもっと、もっと、会いたかったんだ。渡すだけ渡して去っていったスターチスの花束も、テレビ番組に出演していた時、彼の耳についていたあのピアスも。
全部彼が忘れさせない原因を作ってる。
目の前に現れた瞬間から溢れ出る愛に、気付かないふりはできそうもなかった。
『…テヒョン、』
私の肩に顔を埋める彼のお得意な甘え方。私の知る匂い、感触が感性を鈍らせて。拒むべき所が拒めない。
気づけば、あの頃と同じ。ポンポンと優しく撫でては彼の体に腕を回す。顔を上げた彼は、子犬みたいな笑顔を見せた。
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chay(プロフ) - エリサさん» コメントありがとうございます。パスワードを外しましたよで、是非ご覧なって見てください。ありがとうございます。 (2022年1月21日 14時) (
レス) id: 78cfebea7b (このIDを非表示/違反報告)
エリサ(プロフ) - ものすごい物語に出会ってしまったと深夜にも関わらず、一気に読みました！面白かったです。ぜひ続編のパスワードを教えて頂きたいです。 (2022年1月19日 2時) (レス) id: 3441eb251e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：chay | 作成日時：2022年1月4日 8時
