#45 ページ46
「ははっ、君も分かってないな。覚えてないの?ジョングガとあんなことしておいてさ。__聞いたよ。君から誘惑したんだよね。」
『誘惑なんてしてません!あの時はお酒も入ってて。テヒョンさんこそ、そんなこと私に言える立場ですか?』
「…そうだね。普段飲まないお酒の所為で羽目を外し過ぎたのかもしれない、その節はごめんね」
思い出したように謝罪をした所で人間性は覆らない。勿論彼の本心ではないだろうけど、険しい表情で怒ったと思えば謝ったり。この人は本当に読めない。
何を考えているのかも、裏があるのかも、これが素なのかも、計算なのかも。ここまで混乱させられる相手に初めて出会った気がする。
「…怖かった?あの時」
『なんですか、急に』
「いいや、あれも演技なのかなぁって。ほら役者って、自分の都合のいいように涙が出せるんでしょ?だったら君も心の中で実は喜んでるんじゃないの?」
『はい?!』
____最低。そんなことよくも口にできるわ。私の役者人生を費やしてきた時間を馬鹿にしてるの?
やっぱりこの人と話すだけ無駄だ。夢を追いかけてる、私と貴方は別々のジャンルでも同じ立場なはずなのに。
こんな人だとは思わなかった。____ねぇ。人の悲しい顔見て、楽しい?
「…その顔。いいね」
『……っ帰ります。』
「待って!」
ドアノブを掴んだ、その瞬間。同時に重なる手が行く手を阻む。
力が入らない。奇しくも大きくて綺麗な手に私の自由を奪われて。背後にぴったりとくっつかれた瞬間、体は仰け反るかのような反応を見せた。
『……、来ないで』
その直後、何だか様子が可笑しい彼は舌なめずりしながら、ゆっくりと距離を詰めてくる。
「……そんなに怖がらなくても。本題はこれからだよ、」
『え?ジョングクさんのこと以外にまだあるんですか?』
「うん。だから逃げないで、話を聞いてよ。」
「さもなくば前の続きを、『わかりました!聞きます』
ここまで私が折れないと彼は自分の意志を曲げない。でもそれがわかっていたように憎らしい笑顔を見せた彼の中の狂気が私には見える。
ただ、それでも彼の無邪気さに調子を狂わされる。悪気がないように思わせるのは天性の才能なのかもしれない。
649人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:chay | 作成日時:2021年11月25日 5時