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そもそもこの仕事が決まったのが一昨日の話で。
そんなすぐに勉強できるはずない、.......ってのは言い訳。それにしても日韓問題がどーのこーのって噂される中、日本の売れない役者がメディアに出るって。ただの笑い者だと思う。
もっと知名度のある有名な人なら、まだしも。韓国はネット文化だ、誹謗中傷が耐えないのは目に見えている。
それを分かってて、この仕事を引き受けたマネージャーも会社も人情がないと怒った所で仕事を選べる身分でもなかったことに気づかされて、更にメンタルは落ちていくばかり。
『…でも滞在は1週間ぐらいだよね?.......なんとかなる、よ、』
「.......そうね、もっと早くなるかもしれないしね。とにかく、自己紹介だけでも言えるようになりなさい。.......念の為現地で通訳さん頼んでくれたみたいだし」
『…はい。』
大して重くもないキャリーケース。まるで仕事受ける自分の気持ちかのよう。
初めての外国。初めて受かったオーディション。やる気の湧かない不思議な思い。私の不安は最大級に膨らんでいく。
「はい、無事に着いたら連絡します。.......はい了解です。それでは」
このまま逃げ出せたら。.......と、不意に後ろを振り返ってみる。
「(人1)行くわよ、.......。」
『…っ、はい』
・
・
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「着いたらまず宿舎に荷物を預けにいく。そして早速メイクして着替えて移動」
『宿舎?』
「そう。経費の関係で、ホテル連泊は無理。安く借りれる宿舎になったから。まぁ、寮?みたいな」
『…そっか。』
「時間厳守!日本の恥を晒さないように」
まるで日本代表かのように私をはやし立てているけれど。ため息しか漏れない。普通なら念願だった仕事にウキウキするのかもしれないのに。熱出ないかなーなんて飛行機の上でふと仮病を思い立つ。
本当に有名になりたいのか、売れたいのか、よく分からない。
やっぱり私には向いてないのかも。
この仕事を最後にして、もう辞めよう。____常に頭の片隅にあった、でも決して誰にも言えなかったこと。
言い訳がましいけれど、才能もない。足でまといだ。バイトを掛け持ちしてまで、やり続ける意味を見いだせなくなっている。
でもせめて、最後くらい嫌な顔せず一生懸命やるから。これ以上仕事に失望しませんように。
____母の涙が目に浮かぶ。
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作者名:chay | 作成日時:2021年11月25日 5時