My lxxx！02 (ページ45)

今日:22 hit、昨日:8 hit、合計:166,300 hit

・ページ45

・

「ラウール、怖いなら先に行ってるね。またあとで。」

自分の体は動かなかった。止めたいのに、ただ涙が止まらなくて。誰のせいでもない現状。
母は父から包丁を貰う。
そのあとは見れなかったが、呻き声と人が倒れる音がした。

「ラウ、最後も嫌だろ。俺がやってあげるからさ。おいで？」

ru「…嫌だよ、おかしいよ。これ。」

「…おかしいからって、
もう後戻りは出来ないだろ？」

そうだ、もう後戻りは出来ない。
何故母が消えるのを止められなかったのか。力付くで止めさせることも出来た。しかし、生きることが辛かったなら、止めたって、母を苦しめるだけだ。だから、止められなかった。

父は悲しそうな顔で自分を押し倒す。目の前には包丁。必死に抵抗した。

ru「…やめようよ、こんなことしても、意味ないよ。頂仰様の言葉なんて全部信じちゃ駄目だったんだよ、あんなの神様でもなんでもない！！」

「そんなの知ってるよ！！…知ってるよ……」

自分の頬が暖かいもので濡れた。

「でも、信じなきゃやってられなかった。…何かを信じないと、苦しくて、気持ち悪くて。気づいたときには、もう遅かった。…もう、遅いんだよ。」

ru「お父さん？」

「俺達は、頂仰様という架空の存在にただ踊らされてただけ。…けど、…もう駄目なんだ。」

もう一度やり直そう。そう一言言いたかった。けど、その言葉を言う勇気もなかった。言ったら、自分も父もますます苦しくなるだけだ。

「…ごめんな、ラウ。…本当に、ごめん。皆で、天国で会おう。…な？」

父の押さえつけていた手が少し弱まり逃げようと体を起き上がらせた。
しかし、背中に感じるのは鈍痛。咄嗟に父を突き飛ばした。

ボロボロの体でここから逃げようと玄関へ向かう。しかし、このまま出たら父が捕まってしまう。どうしようか。しかし、ここから出なければ。

とにかく血まみれの背中を隠そうと夏には暑い上着を着て、外に出た。

朦朧とした頭の中で考えていたのは、家から遠く離れてしまえば父が自分を刺したと思われないだろうということ。朦朧とした頭ではそんな容易な考えしか出来なくなっていた。

千鳥足で遠くへ歩く。周りの目線が痛い。
誰かに救急車でも呼んでもらえばまだ助かる。だが、もう少し離れないと父が疑われる。

歩き続けて歩き続けて、どこまで歩いたのかわからないが、徐々に体は重くなり、地面に伏し。

そして、気づいたときには新宿駅の汚い青空。