My lxxx！02 (ページ35)

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その日から少しずつ、自分の中で何かが壊れていった気がした。
周りの人にはバレないほど小さな音で何かが崩れた。

家に帰ると母は変わらず家事をやり続けている。毎日の光景。母の体調が悪くなったとき、なんとなく自分も家事を手伝おうと手を伸ばしたこともあった。

「お前はやるな。こいつは今までろくに勉強もしてこなかった。ここに住まわせてやるなら、これぐらいはやらないと駄目だろ。」

その度に父は俺にそう言った。
母がずっと家事をやり続けるのも父の横暴な態度に耐えるのも、仕方ないことなのだ。
…いや、そんな訳がない。

自分がなりたくなかったもの。母と呑気な友人。それは、父の言葉によって作られていた。

今、自分は自分の人生というものを歩いていのだろうか。
歩けてるわけがない。ただ、考えるのを辞めて父の言葉に従っていただけだ。

自分の人生の何かがおかしい。
俺は何でこの大学に通っているのだろうか。何故医者を目指していたのだろうか。
そんなことを考えれば考えるほど苦しくなる。

こんな人生駄目だ。自分のやりたいことで生きていかなければ。でも、どうすれば。

今までただ周りの言葉に従って医者を目指した自分の目の前には何もなかった。医者を目指すことを辞めてしまえば、自分の将来は真っ暗だ。

少しずつ、負の感情が増えていく。今までなにもしてこなかった自分に何が出来るというのだろうか。

意味もなく大学に通うのも億劫になり、徐々に自分の部屋から出なくなった。
ベッドの上で何度も考える。そんな自分を父は故障した道具を見るように眺める。

そんなとき頭に浮かんだのは"死"という言葉。
いじめ。虐待。貧困。
自殺する人には様々な理由がある。自分はそれとは違う。

ただ、徐々に自分が何故生きているのかわからなくなる。何も困ったことの無かった自分が何故生きてきたのかわからなくなった途端、何も出来なくなった。

ここで死んだら、こんなくだらないことで？と笑われるかもしれない。

そんな考えとは裏腹にマイナスな言葉しか浮かばなくなる。
こんな何も出来ない自分に生きてる価値がない。

心臓が握りしめられているかのように苦しい。

何故か涙が止まらない。

体が動かない。

息がしずらい。

そんな思考を止めるには、死ぬしかない。

家にあった長めのタオルをドアノブに輪っかにしてかける。
楽になるはず。そんな期待と共に輪っかに首をかけた。少しずつ絞まり、薄れ行く意識の時に感じたのは。