My lxxx！02 (ページ33)

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港区ページ33

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裕福＝幸福。
それは、この世界の人々が心の奥底に持っている共通認識だ。誰もが羨ましいと思ってしまう。

きっとそれは、裕福を正しく使えば間違いはない。しかし、正しく使えている人なんて極僅かなのだ。

阿部の父親は医者だ。それもかなりの名医。家には膨大なお金が入る。そんな家に生まれれば、何不自由はなく、周りは小さい頃から羨ましいと言ってくる。

幸せでしょ、そんな言葉が嫌いだった。
幸せだと感じたことは一度もない。贅沢に馴れた訳じゃない。単純に、幸せを感じたことがない。

昔から期待をかけられ、将来は医者になるんだろとすでに決められた進路を歩く日々。
勉学に励み、それなりに運動をこなし、周りから見れば秀才の自分は、少し浮いていた。

そんな自分がなりたくない者が二つある。

一つは、自分のことを呑気に天才だと囃し立てる友人達。羨ましいよ、凄いね。そういつも呟くのは別に自分に悪意を持っている訳ではないということはわかっている。ただ、自分が天才なのは努力をし続けてきたからだ。元から秀才だった訳ではない。

皆が遊んでいる間も勉強をし、目から血が出るほどの努力を続けた。嫌でも、やり続けた。
そんな努力を羨ましいなんて言葉で片付けられるだろうか。皆は何も考えず、目先の楽しみに没頭している。その間に自分は努力をし続けたまでだ。

二つ目は母だ。
主婦の母は優しく、自分をいつも褒めてくれる存在だ。ただ、母は何も出来ない。
父が仕事をし、母は家で家事をする。そんな母は人生で一度も外で働いたことがないため、父に何を言われようと反抗することがなかった。いや、反抗出来なかったのだ。

父が怒り母に手をあげても、母は逃げられない。外で生きていく術を知らなければその勇気すらない。一生父にすがって生きていくしかないのだ。
父はそれを知って、母に暴力を奮う。
でも仕方ない。母に逃げる勇気が無いせいだ。生きる術を知らないせいだ。
悪いのは父ではない。

何度もそんな光景を見るたびに、母みたいにはなりたくないという思いから必死に勉強をするのだ。
知識さえあれば、母や呑気な友人のようにはならないから。