My lxxx！02 (ページ20)

今日:24 hit、昨日:8 hit、合計:166,302 hit

・ページ20

・

その日一日中ダイニングテーブルに頭を付しながら椅子に座るラウールは、ぼんやりと朝の阿部との会話を思い出していた。

『もう少し、思い出さないでいなよ。』

自分の人生は、そんなに辛かったのだろうか。早く記憶を取り戻し、自分が死んだ理由を知りたいと考えていたが、そんなことを言われてしまうと知ることが恐怖の対象へと変わってしまう。

kj「ラウール。」

ru「うお、何？」

kj「いや、昨日からぼけーっとしてるから。」

眉を八の字にして顔を覗きこんでくる向井にラウールは伏していた顔をあげた。

ru「康二くん今日の朝の会話聞こえてたでしょ？」

kj「ああ、まあ…」

ラウールが怒鳴り声をあげたとき、一番に部屋から顔を出したのは向井だ。お人好しの性格から、怒鳴り声にいてもたってもいられなくなり、つい一番に顔を出してしまった。

ru「康二くんはさ、何で親に会いに行ったの？」

kj「ええ…急やな。」

ru「本当に、会いに行っても自分は消えないって思ってたの？」

ラウールの真剣な眼差しに、向井はゆっくりと椅子に座った。

kj「…あのときは皆が悲しそうな顔をしたから落ち着かせるために消えないって言ったけど…正直わからんかった。」

ru「もう俺達と居るのよくなったの？」

kj「違う違う！
けど…前に、進まないとあかんの。前に進むには、ここから消えないと駄目。このまま幽霊の姿で皆と幸せに暮らしたって、意味がない。…離れたくないけどな。」

ru「…そうだよね。」

kj「俺な、病気になったときすぐに病院に行かなかったんよ。…このまま病気になって苦しめば、親が同情して自分に振り向いてくれるって思ったから。…最低やろ。」

そう悲しそうに笑うが、向井が最低なわけがない。むしろ、最低なんて言葉この世で一番似合わない。

kj「けど、期待は外れて…一人で死んで。会いに行ったのは、…もしかしたら、病気でも自分を見てくれなくても、死んだらこっちを見てくれてるかもって思ったから。まあ、それも外れたんやけどな。」

ru「…そうだったんだ。」

kj「でも、あれでスッキリした。もうあんな奴等二度と会わんわ。今はな、多分俺は、皆とたくさん遊んだら消えるんよ。心残りは、それだけになったから。」

ru「…そっか。」

kj「…ラウはまだ、消えることとか考えなくてもええんやない？どうせ死んでるんだから、時間はまだまだあるよ。」

そう笑いかけると、向井はその場を後にした。