【イナオリ】破壊の女神 (ページ31)

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時刻は午後八時半。

各々が風呂に入ったり、雑談をしたりと出来る消灯時間前の束の間の休息時間。

Aは風呂に入り終え、抹茶ラテを片手にスマホをいじりながら部屋に戻ろうとしていた。

道中、テラスで夜風に当たる灰崎が視界に入る。

「よっ、灰崎」

「なんだお前か」

「先輩に向かってお前と」

冷えた抹茶ラテを灰崎の首に当てる。

「うおっ」

「先輩に歯向かうからそうなるの」

何事も無かったかのように抹茶ラテを飲むAを灰崎はただ睨み付ける。

「灰崎って大胆不敵だと思ってたなー」

「はあ？」

「有人に聞いたの。修也に追い付けないのとヒロトに抜かされそうな劣等感を灰崎が感じてるってね」

「あいつ………」

顔を顰める灰崎に、尚もAは続ける。

「いいんだよ、それで。焦り過ぎは良くないけどそういう気持ちは自分を強くするから」

「だが」

「大丈夫。灰崎は今まで努力してきたし、これからだってするつもりでしょ？灰崎なら………修也にも負けない、エースストライカーになれるよ」

「はっ、鬼道にも言われたぜそれ。似てんなおまえ達」

笑いながらAの頭に手を置く灰崎の声音は、心做しか清々しさを感じられた。

鬼道とAの言葉によって、灰崎の心の雲は完全に晴れたのかもしれない。