【イナオリ】破壊の女神 (ページ29)

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不調ページ29

「いい感じだよ、坂野上！」

「はい、先輩！」

坂野上とペアを組んで練習を開始して早一時間。

今はAの必殺技、ナールカルチャーレを坂野上に伝授している最中だった。

ミラクルリベロなんて呼ばれるだけあってやはり身体能力はずば抜けている。

技能も申し分なく、努力も怠らない。

「先輩のナールカルチャーレはやっぱり難しいですね………」

「私も最初は苦労したよ。そうだね、坂野上の場合もう少し高く跳び上がった方がいいかも」

「わかりました！やってみます！」

坂野上がもう一度、とシュート体制に入った時。

反対側のゴールから、大きな声が聞こえてきた。

「お前がトロくさいからこうなるんだよ！」

「お前は焦り過ぎだ。雑魚が」

「雑魚はてめえだ！足引っ張ってんじゃねえ！」

「ああ！？格の差ってやつを見せつけてやろうか？」

灰崎とヒロトが言い争っていた。

どうやら先程からシュートのタイミングが合わず、ゴールに入れることが出来ないらしい。

練習の合間に少し見ていたが、灰崎とヒロトのタイミングは完璧にズレている。

オマケにあの性格同士。

仲良くなれば相性は最高となるだろうが、現時点では最悪だった。

終には練習場を去ろうとする灰崎。

さすがに止めに行こうかと思ったが、

「先輩！今の惜しかったですよね！」

「え、あ、うん。もう一度やってみようか」

「はい！」

坂野上に見事に阻止されてしまった。

意図的なものではないのだけれども。