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side 羽生結弦

抱き締めた猫は細く、猫が使っている柔軟剤の香りがした。

「は…羽生…さ…」

ずっと我慢していた。

猫が葉月に負い目を感じているのを知っていたから。

「もういい?」

耳元で呟くと猫は「え?」ととぼけたような声をだした。

「ずっと我慢してて言わなかったこと言ってもいい?」

猫の表情は見えない。

ただ、ずっとあれから一緒にいた。

だから、顔なんて見なくても大体わかる。

「どうぞご勝手に」

ツンケンドンな言葉とは裏腹に声は震えていた。


猫から離れるようとするが、猫はそれを許さなかった。俺に引っ付いたまま離れまいと力をいれいた。

「顔見て言いたいんだけど?」

「別にいいです」

どうせ、泣いてるから見られたくないんだろ?わかってるよ。

仕方ないから猫を無視して力強くひっぺがす。


「うわ!最低!!」


ほら、やっぱり泣いてる。

ふてくされたような表情がなんとも言えない。


あぁ。猫がこんなブスな顔してる時にこんなこと言うのか。






「おい。俺の嫁になれ」






猫のブス顔はさらに崩れた。
鳩が豆鉄砲をらったようなまぬけでぶっさいくな顔。


「おいブス。答えは?え?」

「いろいろ突っ込み所ありますけど、プロポーズしたあとにブスって…」

流石に我に返ったのか。もう、間抜けな顔はしていなかった。

「いや!ってか、付き合ってもないのに嫁って話とびすぎでよね??」

猫は片手で頭をおさえる。

「普通、そういうのって順を追って…する…もん…」

猫の珍しく饒舌な口を、片手で両頬をつまんで黙らせた。


「俺が聞いてるのは嫁になるのか。ならないのか。どうするんだよ?」


猫は首を振って、俺の手を振りほどいた。

少し挑発的な目だった。




「なってあげてもいいですよ」




猫らしい。
素直じゃない。


でも、こんなに幸せなこと一生のうち何度あるだろう。









「もちろん今すぐじゃねーよ?大学お互いが卒業して現役引退してとかいろいろあるからな?勘違いすんなよ?」

「わかってますよ。気早いこといったのそっちじゃないですか」





新しい、こんな日が永遠であればいい。





好きな人と、好きな人の好きな人。
綺麗事でいい。
みんなが笑っているといい。





それが永遠に続けばいい。









ー終わりー

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らっき(プロフ) - 完結されてからかなり経ってしまっていますが、読ませていただいてすごく好きな作品になりました。書いて下さってありがとうございます!それだけ伝えたくてコメントしました(*^^*)見てくださるといいなぁ、なんて思ってます! (2021年12月7日 22時) (レス) id: 4da1a124c4 (このIDを非表示/違反報告)
めぐみ(プロフ) - 大変お久しぶりです。最後まで読ませて頂きました。ぜひとも、時間があるときで構いません。名前を自分の名前に変換したものを読みたいので、よろしくお願いします。 (2018年9月2日 8時) (レス) id: 058ee396c0 (このIDを非表示/違反報告)
納子(プロフ) - yuccoちゃんさん» ほんとうに読んでいただきありがとうございました! (2018年4月9日 9時) (レス) id: 21906f0f83 (このIDを非表示/違反報告)
yuccoちゃん(プロフ) - こんばんは!ゆづのドSなセリフにトキメキました!言われたい!サイコーの終わりでした!番外編で続きも読みたいです! (2018年4月8日 1時) (レス) id: 72d5e5baf7 (このIDを非表示/違反報告)
納子(プロフ) - 鹿さん» いつも丁寧なコメントをありがとうございます。読んでいただけてほんとうに嬉しいです (2018年3月29日 20時) (レス) id: 21906f0f83 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:納子 | 作成日時:2017年9月7日 21時

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