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side 猫田未以奈
羽生さんは私に告白なんてしないし、私ももちろんそんなことしない。でも、ずっと一緒にいる。
私が羽生さんを好きになるのは時間の問題で、葉月ちゃんへの後ろめたさはもちろんあった。でも、昌磨が葉月ちゃんのことを見つけ出して幸せにするって約束してくれた。
羽生さんは週に2,3回は私のアパートに居座ってソファに寝そべってゲームや大学の課題をした。時には遅くなってそのまま泊まって帰ることもあった。
でも、べつにキスもそれ以上もなかった。
友達?恋人?どういう状況なのか自分でもはっきりしない。
羽生さんはオリンピックを二連覇したけど足の怪我で世界選手権は棄権。私も腰の痛みで棄権。
ほんとは今頃、練習しているはずなのに結弦とゴロゴロとしているようなざまだ。
「猫〜。腹へったなんか作れよ」
羽生さんは寝転んだまま、視線だけをこちらにやった。
人の家に居座って何様だと言ってやりたいが、先輩という点と私もお腹がすいているという点を考慮して許してやることにする。
「チャーハンとかでいいですか?」
「うん。それでいいよ」
どうせ、何を作ってもずけずけと文句は言われるんだ。
立ち上がったときに調度携帯のバイブレーションが響いた。
「猫に電話とかめずらしー」
羽生さんの余計な一言は無視して携帯を拾い上げる。
画面には"昌磨"という文字。
「昌磨だ。めずらし」
羽生さんは昌磨という言葉に反応してのそのそと身体を起こし、少し怪訝そうな顔をした。
「もしもし」
『あー。みー?久々』
こないだ。オリンピックで会ったばっかりじゃん。
『あのさ』
昌磨はなんだかいつもよりあらたまった声だった。
『見つけた』
それだけでもうなんのことかはっきりとわかった。
「ほんと?葉月ちゃん見つかったの?」
目頭が暑くなる。
羽生さんも勢い良く立ち上がった。
「う…上手くいった?」
『どうなるかはわからないけど、でだしとしては成功かな』
「そう。よかった」
耐えられず涙が溢れ出す。
羽生さんがこちらへ歩みよってくるのがわかった。
「じゃあ、切るね」
私は昌磨に涙を悟られまいと少し乱暴ではあったがあわただしく電話を切ってしまった。
報告しようと目の前にいる羽生さんを見上げようと顔を上げた瞬間だった。
ふいに、羽生さんは私に抱きついてきた。
今までにこんなことがなかったから戸惑いが隠せない。
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らっき(プロフ) - 完結されてからかなり経ってしまっていますが、読ませていただいてすごく好きな作品になりました。書いて下さってありがとうございます!それだけ伝えたくてコメントしました(*^^*)見てくださるといいなぁ、なんて思ってます! (2021年12月7日 22時) (レス) id: 4da1a124c4 (このIDを非表示/違反報告)
めぐみ(プロフ) - 大変お久しぶりです。最後まで読ませて頂きました。ぜひとも、時間があるときで構いません。名前を自分の名前に変換したものを読みたいので、よろしくお願いします。 (2018年9月2日 8時) (レス) id: 058ee396c0 (このIDを非表示/違反報告)
納子(プロフ) - yuccoちゃんさん» ほんとうに読んでいただきありがとうございました! (2018年4月9日 9時) (レス) id: 21906f0f83 (このIDを非表示/違反報告)
yuccoちゃん(プロフ) - こんばんは!ゆづのドSなセリフにトキメキました!言われたい!サイコーの終わりでした!番外編で続きも読みたいです! (2018年4月8日 1時) (レス) id: 72d5e5baf7 (このIDを非表示/違反報告)
納子(プロフ) - 鹿さん» いつも丁寧なコメントをありがとうございます。読んでいただけてほんとうに嬉しいです (2018年3月29日 20時) (レス) id: 21906f0f83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:納子 | 作成日時:2017年9月7日 21時