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side 羽生結弦
グランプリファイナルまでは一日一日が早かった。
オーサーから指示されたハードで濃い練習メニューをこなす中で増えたのは怪我へ不安でもなく、滑れる喜びだった。
それと、アイツに。
猫にどんな顔で会えばいいんだ。なんて余計な不安。でも、それを作り出したのは自分の行動。言い訳も、責任転嫁もできない。
グランプリファイナルが行われるバルセロナまでの飛行機の中、頭の中には猫ばかり浮かんでいた。
何がしたいんだよ。
俺は。
自分にイライラした。
葉月のことどうにかする前に猫に先走って気持ちのを伝えるようなことして、そんな猫も葉月も苦しむようなことをして何がしたいんだよ。
でも、会場入りしてしまうと考えていたことが杞憂だったことがわかった。
「ユヅル、久し振り!」
ハビエルとの久々の再開にハイタッチを交わす。
「元気そうで何よりだよ」
一緒にいたブライアンも柔らかい笑顔でうなづく。
でも、そこに猫の姿はない。
「あ、うん!ありがとう!」
辺りをぐるりと見渡すけど猫の姿はどこにもない。
「猫は?来てるんでしょ? 」
心臓がバクバクと音を立てた。
でも、それを悟られないようになるたけ穏やかにどうでも良さそうに尋ねる。
「あー!ミーナね、ホテルだよ!」
ハビはあっけらかんと言った。
ハビにとってはそんなことはどうってことないだろう。
「そうなんだ…」
「なんか、時差ボケがあるから休みたいって」
「へ…へー…」
当たり前だけど、そんなのは嘘っぱちだ。
絶対、俺と会いたくなかったんだ。
猫とどう接するかとか得意げに考えていた自分が恥ずかしい。
それ以前の問題もあることをすっかり頭から抜かしていた。
そりゃそうだ。女子と男子じゃ日程が違う。最終日まで避けようと思えばいくらでも避けれる。
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らっき(プロフ) - 完結されてからかなり経ってしまっていますが、読ませていただいてすごく好きな作品になりました。書いて下さってありがとうございます!それだけ伝えたくてコメントしました(*^^*)見てくださるといいなぁ、なんて思ってます! (2021年12月7日 22時) (レス) id: 4da1a124c4 (このIDを非表示/違反報告)
めぐみ(プロフ) - 大変お久しぶりです。最後まで読ませて頂きました。ぜひとも、時間があるときで構いません。名前を自分の名前に変換したものを読みたいので、よろしくお願いします。 (2018年9月2日 8時) (レス) id: 058ee396c0 (このIDを非表示/違反報告)
納子(プロフ) - yuccoちゃんさん» ほんとうに読んでいただきありがとうございました! (2018年4月9日 9時) (レス) id: 21906f0f83 (このIDを非表示/違反報告)
yuccoちゃん(プロフ) - こんばんは!ゆづのドSなセリフにトキメキました!言われたい!サイコーの終わりでした!番外編で続きも読みたいです! (2018年4月8日 1時) (レス) id: 72d5e5baf7 (このIDを非表示/違反報告)
納子(プロフ) - 鹿さん» いつも丁寧なコメントをありがとうございます。読んでいただけてほんとうに嬉しいです (2018年3月29日 20時) (レス) id: 21906f0f83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:納子 | 作成日時:2017年9月7日 21時