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tear ページ9

side 相沢陽菜子

どうしよう…。

私は悩んだって仕方ないのにテレビの前で意味もなく泣いていた。




私が辞退した2016年の世界選手権。
昌磨くんは初出場した。

結果から言ってしまえば、フリーでミスが出て7位。
不本意な演技に昌磨くんは涙を流していた。




悔しいのは昌磨くん。
私が悩んだって仕方ないし、泣いたって意味がないのは知ってる。

でも大好きな昌磨くんが泣いてるのを見るといてもたってもいられなくて側に置いてあった携帯を手に取った。






昌磨くんのアカウントの通話ボタンを押しかけて私は手を止めた。

「はぁ」

私が電話かけて何か意味があるんだろうか。
フィギュアスケートを辞めた私が何か言ったところでそれは昌磨くんの助けになるわけ?
突然襲ってくる自暴自棄に私はソファに身を沈めた。


ーピリリリ

タイミング良いのか悪いのかそんな音が響き、私は素早く体を起こした。



「もしもし!」

『も…もしもし…』

昌磨くんだと決めつけて確認せず通話に応じたせいか草太の声に無意識に拍子抜けしてしまう。

「なんだ…草太か」

思わず口に出してしまった。

『まじで電話切るぞ?』

「あーごめんなさい!ごめんなさい!嘘です嘘です!」

草太は軽く短いため息をついた。

『その様子だとまだ昌磨くんとは連絡取ってないみたいだね』

「…うん」

わざわざ、私を心配して電話をかけてくれたのに何となく悪い気がした。

『電話したら?』

「でも、私なんかが電話しても昌磨くんのためになる気がしない。何言ったってきっと薄っぺらい気がする。そもそも昌磨くんに私の励ましなんかいるのかどうかだってわからないもん」

きっと、昌磨くんにとって今はそっとしておいてほしいはず。私なんかがぐちゃぐちゃと昌磨くんを掻き回して良いはずがない。

でも、こんなんで彼女である意味あるのかな…?



『バカかお前。考えてみれば?もしお前が昌磨くんの立場で昌磨くんから連絡もらったら嫌?』

「そんなことない!」

『逆に連絡が来なかったらどうだよ?』

「んー。冷たいって思っちゃうかも…」


あぁ。そうか。
なんで、私って自分の立場からしか物事を考えれないんだろう。

「草太…ありがとう…」

いつも、草太に助けられてばっかりで私ってどうしようもない。



『そんなのいいから。早く連絡入れろ』


草太はそれだけ言うとプツリと通話を切られた。

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納子(プロフ) - 熾嫩さん» ありがとうございます!頑張ります! (2017年6月20日 19時) (レス) id: 21906f0f83 (このIDを非表示/違反報告)
熾嫩(プロフ) - 更新楽しみにしてます(*´ω`*) (2017年5月30日 7時) (レス) id: accc576dcb (このIDを非表示/違反報告)
納子(プロフ) - 綾音さん» ありがとうございます!! (2017年4月7日 22時) (レス) id: 21906f0f83 (このIDを非表示/違反報告)
納子(プロフ) - 綾音さん» ありがとうございます!すみません!できません! (2017年4月7日 22時) (レス) id: 21906f0f83 (このIDを非表示/違反報告)
納子(プロフ) - 晴風さん» ありがとうございます!! (2017年4月7日 22時) (レス) id: 21906f0f83 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:納子 | 作成日時:2017年2月20日 20時

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