検索窓
今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:30,625 hit

*3 ページ47


車内に流れる、静かな曲調のBGM。延々と続くオレンジ色の照明を眺めながら、昔行った家族旅行のことを、何年かぶりに思い出す。


帰り道、寝てしまった母と兄弟と、運転席の父が退屈にならないよう、たくさん話しかける私。暗記した九九、覚えたことわざ。嬉しそうな顔。



少し、頭を動かし、こっそり陸さんの横顔を見る。気づいた陸さんもこっちを見て、咄嗟に目を逸らす。Aさん?どうかした?と聞いてくれる陸さんに笑い、首を振り、また窓の外を眺める。ああ、そうだ。


「陸さんは、運転しながら歌ったりしますか?」


「…あー、気づくと歌ってる時があるけど」


あ、一人の時ね、と付け足す。ちょっと、というかすごく聴きたいけど、頼んだら絶対に歌ってくれるからな、今はいいや。できたらまたいつか。



▽△



遠くで名前を呼ばれた気がして、意識が戻ると揺すられる腕。顔を上げる。ね、寝てた、寝てていいとは言われたけど、まじで寝たかあたし…


恥ずかしさを感じながら陸さんを見ると、着いたよ、と優しく笑う。起きてりぶさんがいる幸せ…というか、着いた?車内から外を見ると、夜が明けそうな薄い色の空、と、遠くに広がる、海…う、海!?



うわぁ、と思わず大きな声をだすと、出ようか、と運転席を降りた陸さんがこっちに回り、ドアを開けてくれる。…スマート!!お礼を言いながら降りると、風があり、潮の匂い。

そのまま砂浜まで歩いていく。夏でも、この時間は涼しく感じるんだなぁ。しばらく、何年かぶりに見る海から目を離せずにいて。



そのあいだ、陸さんがいることを忘れ、慌てて後ろを振り向くと、遠くでしゃがみこみ、こっちを見ている。近づくと、海見てるAさん見てた、と穏やかに笑う。

いろんな感情が溢れそうになり、言葉を探していると、よっ、と立ち上がる陸さん。


「…海、に連れていきたいって、思ってくれたんですか?」


んー、と海の方を見つめ、それからこっちへ、腕が伸びて、陸さんの指が、私の頬に触れる。思わず息が止まり、動けずにいると、


「まあ、海っていうのはぱっと思いついて。誰もいない、広いところ」


触れた頬を撫でられ、身体中の意識が持っていかれる。こ、この前と…!同じ!酷く動揺していると、口元は笑って、でもまっすぐな陸さんの視線から逸らせずにいると、ごめん、と言われ、陸さんの指が頬から離れる。

*4→←*2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (32 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
46人がお気に入り
設定タグ:歌い手 , りぶ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ちぎょ(プロフ) - 皆々様、お世話になっております、作者のちぎょです。続編のようなもの作ったんで、よろしくどうぞ!やっちまった感あります!ではでは。 (2018年8月18日 2時) (レス) id: 2a62607b53 (このIDを非表示/違反報告)
紫乃(プロフ) - うわ、好きです(突然の告白) (2018年8月12日 19時) (レス) id: eceedcc17c (このIDを非表示/違反報告)
蒼依(プロフ) - ちぎょさん» めっちゃ楽しみにしてますね!! (2018年8月3日 18時) (レス) id: 0ab5b0bbe0 (このIDを非表示/違反報告)
ちぎょ(プロフ) - 一回、うえってくらいあんまい話書いてみたいんですよね…りぶさんに酔っ払っていただくか… (2018年8月3日 10時) (レス) id: 2a62607b53 (このIDを非表示/違反報告)
ちぎょ(プロフ) - 蒼依さん» 蒼依さん感想ありがとうございます!書き始めた当初は友人のまま、面白おかしい関係でいくつもりだったのに、先に行きたい欲が出ましたね…夏なもんでね…続編とか言っていただけで嬉しすぎます!未定ですが、また短編集を作りたい気持ちはあります(・・*) (2018年8月3日 10時) (レス) id: 2a62607b53 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ちぎょ | 作成日時:2018年6月24日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。