七十六話 ページ32
「実はオレ、前からディアソムニアの寮服着てみたかったんだよね〜。
だから着られてラッキー！みたいな？」
「なんじゃ。そういうことならわしの寮服も貸してやるぞ」
「うーん…リリアちゃんのは、オレにはちょっときっついかなぁ…」
「じゃ、じゃあまさか……」
その後に続いた沈黙。続く言葉は簡単に想像できた。
「もちろん、若様もご健在でいらっしゃる！先程の群衆も全て安全に誘導してくださった。感謝しろ！」
「そ、そんなんありッスか！？」
サバナクロー寮生なら野次でも飛んできそうだったが、その時ばかりは一瞬で物音ひとつせず静まった。
上げて落とすってこういうことかな。……違うか。
どうでもいいことを考えてた私。
「________あー、もういい」
沈黙のち放たれた一言。
「………え？」
余裕そうだった顔は、いつのまにか気怠けないつもの表情に戻っていた。
寮生たちがレオナ先輩の方を震えたように見つめる。
固まった寮生たちを見て「わからねぇのか？やめだ。やめ」と冷たい笑いを溢す。
「ちょ、レオナさん？それってどういう……」
寮生の輪から抜け出したレオナ先輩に、慌てたようにラギー先輩が呼び止める。
「バーカ。マレウスが五体満足で試合に出るなら俺たちに勝ち目があるわけねぇだろ？
そんなに試合に出たって意味ねぇよ。俺は降りる」
はぁ？負けるのが怖くてビビってんの？だっせー。
「そんな！マレウスはともかく、他寮の有力選手は潰してきたじゃないッスか！
レオナさんが出ないなんて、3位になれるかどうか……オレたちの夢はどうなるんスか？」
面倒くさそうに振り返ったレオナ先輩。その顔に希望の色は欠片もない。
『いや、無責任すぎるだろ……』
計画を実行したのは寮生たちだけど、計画を考えたのはレオナ先輩だろうに。
百獣の王って不屈だったらしいけど……寮長でもあろう奴が、何が不屈だよ。投げ出してるじゃんか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 207人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サリー | 作成日時：2023年9月7日 7時
