六十四話 ページ20
名前まで完全に示されている____攻略対象だろう。そう思った。
予感ってのは当たるもので、パラパラと人がまばらにいる食堂で、彼らはすぐに見つかった。
だってあきらかに違う！特徴がありすぎる！
ジャミル・バイパーという人は色黒で長い黒髪の、初手で私がクールそうな人だと感じた先輩。
その隣にはひたすら白！で明るい！人がいた。スカラビア寮の寮長らしい。
ニコニコしてる人、と思った人だな。
「なぁ、お前昨日怪我したヤツだろ？ちょっと話聞かせてくれよ。」
「…はぁ？急になんなんだ、あんたら。」
「あぁ〜っ！この狸、入学式でオレの尻燃やしたやつ！」
『お前はもうちょっと学べ』
「はぁ……グリム。キミは少し口の利き方に気をつけた方がいい。」
初めから印象最悪になるじゃないか。
案の定、ジャミル先輩は顔を顰めてこちらを警戒した様子だ。ほら、言わんこっちゃない。
「……いきなりすまないね、キミたち。」
隣のスカラビア寮長さんは「大丈夫。気にすんなって！」とニッコリ。
うわ、明るい……
「それにしても、ハーツラビュルの寮長と入学式で暴れた狸。なんだか面白い組み合わせだな！」
「俺様は狸じゃねぇんだゾ！グリムだ！」
「へぇー、そうか！オレはスカラビア寮寮長、カリム。こっちは副寮長のジャミル。よろしくな！」
私も名乗らなければと「Aです…」と控えめに言う。
「あっ。お前って、確か入学式で魔法が使えないって言われてたヤツだろ？
それに女子とはな〜。これからよろしく！」
なんの疑いもなく差し出された手を遠慮がちに握る。
すげぇ、今までにこういうタイプを見なかったからか調子狂う。
握った手を暫く見つめていたら、「どうしたんだ？」と溌剌な顔がきょとんとした表情になる。
隣のジャミル先輩の視線が鋭くなった。
話の趣旨がズレた気がするので「なんでもないです！」と笑って誤魔化しておいた。
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作者名：サリー | 作成日時：2023年9月7日 7時
