ぶりっ子 106 ページ19
*
明け方。
ある隠は、戦うことの出来ない彼が一人で鬼と対峙する時くらい_いや、それ以上の恐怖におののきながら、片膝を着いていた。
「庇ったのですか?鬼を__あの子が?」
「そ、その通りです!カナヲ様によると、首を切ろうと刀を振り下ろした際に鞘で防がれ拘束された、と……!」
本来ならば蟲柱の継子である栗花落カナヲ様が報告をするはずだったのだが、那田蜘蛛山の被害が予想以上だったため彼女は怪我人の救護にまわった。代わりにこの俺が報告役を務めることになったのだが__、
「へえ、そうですか。分かりました」と彼女が呟くと同時に、俺の体感温度がマイナス5度くらいまで下がった。あとはそのまま下がって良いと言われ早足でその場を去ったが、体の震えと冷や汗は止まらない。
__やっぱり柱って、怖ぇ。
蟲柱の目がわらっていない笑顔を思い出し、ぶるりと震える。そんな俺に、新人の隠が恐る恐る近づいてくる。その背中には元凶がいて、それはもう穏やかな寝息を立てていた。
「先輩、大丈夫でしたか?」
「大丈夫なわけねえだろ……よりによって蟲柱の前で妹の話しなくちゃなんてとんだ災難だよホント」
「そんな……そんなに姉妹仲が悪いんですか?蟲柱様とこの人って…」
「仲悪いっていうよりその女の性格がな……色々と、な」
ちらりと後輩が、後ろに背負った蟲柱の妹を見やる。
コイツは入ってきたばかりだから分からないんだろうな。その顔は、「こんなに可愛いのに」と言いたげで。
「面倒くさいことになるからそいつにだけは関わるなよ。見た目は可愛いが、中身は悪魔だ」
男癖の悪さ。女に対する過度な嫌がらせ。特に、蟲柱の継子であるカナヲ様への嫌がらせは相当なものだったらしい。それを笑顔で、楽しそうにやるというのだからまた怖い。
怪我の程度は俺には分からないが、蝶屋敷でしばらくは治療を受けるのだろう。
これから、大変なことになりそうだな……。
_____
__
『……っ!!?』
突然の浮遊感と、顔面に鈍い痛み。
驚いて目を開ければ、ぼやけた視界に青い空とまぶしい太陽が映った。__夜が、あけてる。
そうだ、私那田蜘蛛山で縛られて、そのまま眠ったんだった。身動きをしようとすると、横にいた隠が私の頭を鷲掴みにし地面に打ち付けた。
ぐわん、と揺れる視界の中でとらえたのは、柱の方々の姿だった。
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紅奈虹夢@虹茶(プロフ) - 無理しないで頑張っていただければ幸いです (5月3日 22時) (レス) id: 763d4d21f9 (このIDを非表示/違反報告)
はる - 初コメ失礼します!!この小説大大大大大好きです!!これからも頑張ってください!!応援しています!! (4月29日 20時) (レス) @page27 id: 41084e4d77 (このIDを非表示/違反報告)
くまもん - 最高です。ドタイプな作品です。更新お願いします! (2月29日 15時) (レス) @page27 id: 888b8ee33d (このIDを非表示/違反報告)
おもち - 更新待ってますね!ゆっくりでいいので! (1月7日 18時) (レス) @page27 id: 4e402dc10b (このIDを非表示/違反報告)
とく(プロフ) - 続きが気になります!更新待ってます!! (7月21日 22時) (レス) id: 72e740ca3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:菜々 | 作成日時:2020年11月15日 22時