ぶりっ子、前世を思い出す ２ 【鬼滅の刃】

ぶりっ子 番外編 ７ ページ19

＊


＿＿＿夜も更けた。

置き手紙は机に置いておいた。
刀も持ったし、必要最低限の衣類なども持った。
……うん、何も忘れ物は無い。

問題は、私の部屋から玄関に行くにはしのぶさんの部屋の前を通らなければならないという事だけだ。


……しのぶさん、もう寝てるよね。というか寝てて欲しい。(願望)


しかし、しのぶさんの部屋から漏れる光でそんな淡い期待も打ち砕かれる。


『(最悪……！)』


……そうは思いながらも、見つからなければこちらのものなので身を低くして息を殺し、物音を立てないようにそーっと前に進む。


｢〜〜〜……？｣

｢〜〜〜……｣


……？
しのぶさんの部屋から、話し声……？

この時間帯、しのぶさん以外の人はいつもならぐっすり眠っているはず。……誰だろう？

ダメだとは思いながらも、前に進める足を止めてしまう。……しかし、すぐにこの行動を後悔した。


｢……師範は、Aさんが嫌いなのですか｣

｢…………出来ることなら。もう、顔も見たくないです｣


ああ、やっぱり。
…………聞くんじゃ、なかった。

｢顔も見たくない｣、か。
何だか、もう悲しみを通り越して笑いさえ出てくる。
少しだけ出てきた涙を袖で拭い、廊下を早足で歩いた。

少し急いだからしのぶさんたちに気づかれたかも。……まあいいか。遅くても明日には気付くことなんだから。

そうは思いながらも、雨の降る暗闇の中を駆けていった。


某月某日。私、胡蝶Aは家を出ました。



＿＿＿＿＿
＿＿

ぶりっ子 番外編 ８→←ぶりっ子 番外編 ６

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す