ぶりっ子、前世を思い出す ２ 【鬼滅の刃】

ぶりっ子 番外編 ３ ページ15

＊


＿＿＿花柱が、死んだ。
カナエ姉さんの訃報は、瞬く間に鬼殺隊中に広まった。……なんで、なんで？
しのぶさんが家に帰ってきた時に聞かされたそれは、私を奈落の底へ突き落とした。


｢……カナエ姉さんが、死んだ｣


蝶屋敷にいる者全員がひとつの部屋に集めさせられ、聞かされた一言がこれ。

この言葉を言ったときのしのぶさんは、俯いていて表情が読み取れなかった。その一言だけ言うと、しのぶさんは部屋に戻ってしまった。


『……は？』


蝶屋敷にいる人達のほとんど全員が泣き出した。

……私は、涙さえも出なかった。
人間、受け入れられない時は涙も出ないらしい。
昨日本当は、カナエ姉さんと町でお買い物するはずだったのにとか折角おめかししたのにとか、ずっとそんな事を考えていた。

こんなのは嘘で、その内ひょっこり現れてくるんじゃないか。それで、A。って優しく私の名前を呼んで、みんなには内緒でおやつを一緒に食べようって誘ってくれるんじゃないのか。

どうしてもカナエ姉さんが死んだと言う実感がわかず、ただただ放心するばかりだった。



＿＿＿＿＿
＿＿




｢……カナエ姉さんッ…………！｣

『…………』


カナエ姉さんのお葬式。しのぶさんや蝶屋敷の人達の嗚咽が聞こえるが、やっぱり私は涙さえも出なくて。
カナエ姉さんは、きっと私のことを愛してくれていた。カナヲが来てからはちょっと分かんないけど。

棺に横たわるカナエ姉さんは寝ているだけのように見える。今に目を覚まして、動き出しても不思議じゃないくらいいつも通りだった。

お願いだから起きてよ、今なら嘘って言われても怒らないよ。そう思っても棺の中の姉が体を動かすことは無くて。固く閉じられたそのまぶたがもう開くことは無いのだと、私の大好きなその桃の瞳を見ることはもうかなわないのだと理解して唇を噛み締めた。



両親も、これからはカナエ姉さんも居ない。一体こんな私を誰が愛してくれると言うのだろう。

ここから私は、ただひたすら愛情不足に耐えられなくって、色々な人に媚びを売るようになった。

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