★：ｋｒ ページ8
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淳太くんの入院手続きなど諸々済ませ駐車場に向かうマネージャーと別れて、しげを待たせている淳太くんの病室に踵を返す。
「ーーー、ーー」
面会時間を過ぎた院内は恐ろしく静かで病室から離れた廊下でもしげがしゃべってるのがわかる。
もしかして淳太くんが目を覚ましたのかも、それとも容態に変化があったのかもしれないと自然と歩くスピードが速くなる。
「淳太…ほんまごめん……」
病室の扉はほんの少し開いていた。
先程とちがってはっきり聞こえるしげの声色はこれまでに聞いたことないもので、なんというかむずむずしてくすぐったくてドアノブに手をかけたまま病室に入るのを躊躇ってしまう。
「疑ってごめん、信じてあげられなくてごめん」
今朝の一件についてちゃんと謝罪できずに有耶無耶になってたこと後悔してたんや…ストイックで熱いヤツやからグループが波に乗ってきた大事な時期のスキャンダルが許せへんかったんやろうな、それが信頼してる淳太くんだったから尚更裏切られた気持ちも大きかったよな…隠し子やなくてよかった。
「……淳太、起きてや、声聞きたい」
手なんか握っちゃってほんましげは淳太くんが大好きやな〜。顔まで触って、あとで怒られてしまえ。
「……じゅんた」
んんん？ ちょっと雲行きが怪しくなってきたぞ？
その愛おしそうな目なに？ 顔近ない？ まだ寄る？
「…っ」
したー。
キスしたー。しやがったー。
そういうこと？ そういうことなん！？
「さすがに起きへんかぁ」
お伽噺やったら王子さまのキスでお姫さまが目を覚ますのがテッパンやもんな…って待て待て。確かにしげは淳太くん大好きやし、淳太くんも満更でもない感じやったけど…えっ？
「……じゅんた」
なにーその声。オスやん。ただのオスやん。
えっ、えっ、いつスイッチ入ったん。
オイ重岡、顎を持つな、クイっとすな。止まれ。
「んん゛っ」
「んあーおかえり、遅かったなぁ」
「ちょっと手続きに手こずってもうたんよ」
「……やっぱ泊まったら」
「あかん。絶対あかん。さっきよりあかん！」
「は？何やねんそれ」
「淳太くんあとでな」
ぐっすり眠っている淳太くんに触れようとしたら「照史これ持って」と荷物を渡してきた。自分はしっかり髪と頬を壊れものを扱うようにやさしい手つきでなでてから病室を出て、忘れもんしたとか言い出して病室戻りやがって……お前絶対キスしたやろ！
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作者名：26 | 作成日時：2021年8月21日 17時
