そばにいた (ページ4)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:49,823 hit

。ページ4

.

あぁ、ずっと、一緒に居たのに。
俺は目の前にいる、好きな奴さえ守れねぇのか。

『笑っちゃうよね、こんなの。』

なんて、嘲笑うように言った彼女に、俺はなんにもできなくて。

" 男 "である俺にどうしてこんなこと打ち明けたのか、それを考えるしかできなくて。

その事実を、信じたくなくて。

「小学生の頃の痣も？」

『…知ってたの？』

「初めて会った時、見えた。」

『…そっか。』

「親御さんは知らねぇの？」

『…だってお母さん、幸せそうだもん。』

何も言えなかった。

どう声をかけたらいいのか分からなかったんだ。

彼女を見ることも出来なかった俺は、
窓の外を眺めた。

.

憎らしいほどに、晴れ渡った空だった。

.

ただ、ゆっくりと時間が流れていく。

『ねぇ、』

「ん？」

『私さ、』

「うん。」

『もう帰りたくない。』

.

『隼人、私帰りたくないよ。』

.

静かに、涙を流した。

俺はなんて無力なんだろう。

ただ、目の前にある小さな体を抱き締めることしか出来ないなんて。

『…隼人、？』

「俺が！俺が、お前のこと、…Aのこと守るから。…だから泣いてんじゃねぇよ。」

自然と、抱き締める力が強まる。

.

『…馬鹿だなぁ、甲斐は。』

.

そう、震えた声で言った。

俺が、俺が守らなきゃ。

.

.