そばにいた (ページ21)

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甲斐は何度も何度もぶっきーを殴った。

だけど意図も簡単に形勢逆転。

ぶっきーは、甲斐の襟を掴む。

柊「お前は何も知らなかったのか-
薄々勘付いてたんじゃないのか、景山が酷い目に遭うことを！
お前はそれでいいと思ったから、引き受けたんじゃないのか！けど……」

「急に怖気付いて景山を庇った。」

「…な訳ねぇだろ！」

ぶっきーはフラフラしながらも、甲斐の拳を躱す。

「ならどうして景山を陥れるような動画を撮らせた？…それを頼んだのは、景山を攫おうとした奴らなんだろ？」

甲斐「……。」

甲斐はずっと黙っている。

とても、苦しそうな表情で。

ねぇ、もういいよ。もういいから。

柊「…目の前で攫われるのは気が引けるが、他人がアップした動画なら、構わないと思ったか？」

甲斐はその言葉にむた拳を振り掲げたけど、またかわされた。

甲斐の襟を掴んで、無理矢理持ち上げた。

柊「…景山がっ、傷ついたことに変わりはない！！」

甲斐「…黙れ！！！！！」

甲斐はそう叫ぶと、ぶっきーに馬乗りになった。

甲斐「テメェに何がわかる！」

その言葉は、私にも重くのしかかった。

私には甲斐の何も分からない。

柊「……わかるよ。お前は、彼女に嫉妬してたんだ。夢に向かって生きる彼女が、羨ましかった。」

甲斐「知ったような口聞いてんじゃねぇよ！」

柊「…素直になれよ、夢を諦めた自分とは対称的な彼女が妬ましかった、違うか？」

甲斐「…だったら何だよ！！」

甲斐は、夢を諦めた。

家族を支える為に、諦めざるを得なかった。

ずっと、そばにいたのに、そんなの知らなかった。

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