そばにいた (ページ12)

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放っておけるわけなんかなくて、

気付けば足が動いていた。

Aちゃんは女子トイレで泣いてた。

こういう時どうすればいいんだろう。

声とか掛けないほうがいいのかな。

ただ、隣にしゃがんで小さく震えた背中を撫でた。

『ありがと、さくら。』

「あ、いえ、その。」

顔を上げたかと思えば、
無理やり作った様な笑顔でそう言った。

なんか恥ずかしいな、って言いながら綺麗な指で涙を拭った。

「Aさん、」

『Aでいいよ。』

「…Aちゃん、なんで泣いてるの？」

私の直感でしかないけど、死ぬのが怖くて泣いている様にはどうしても見えなかった。

『…私ね、甲斐に、沢山助けられたの。』

『私友達いなくて、初めての友達だった。』

思い出す様に、ゆっくりと呟いていく。

『私ね、お母さんの彼氏に、犯られた。』

「え？」

淡々と、紡がれた言葉はあまりにも信じ難くて、

でも、嘘とも思えない。

『それを言ったらあいつさ、俺が守るから！って言ってくれたの。嬉しかった。』

『それからね、甲斐は守ってくれたよ。暴力を受けた時、連絡したらすぐに駆けつけてくれた。』

『でもね、私甲斐の負担になりたくなくて、もう大丈夫って嘘ついた。』

Aちゃんの目には涙が溜まっていた。

でも、私の目をじっと見つめていた。

『言えない事情があるってわかってる。甲斐はさ、ずっと守ってくれたから、助けてくれたから、』

『甲斐を救えるのなら、私は死んでも構わない。』

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