依存病人【d!】 (ページ7)

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「あ″...ぁ...」

口内が酷くパサついて、舌がごろりとした大きな異物に感じた。舌を動かして口内を潤すと、もう一度声を出した。

「あー...」

しかし、どれほどの間寝ていたのだろうか。一時的に口内は潤っているが、実際は水分も何も取っていないため、取り敢えず何か飲みたい。

周りを見渡すとラバー調の床、均一的に並べられた白く清潔感のあるベッド。その各一つ一つの壁際に備え付けられた仕切りのカーテン。

もしや、病院にでも運ばれたのだろうか。

確かにあんな大きな事故、病院送りになって当然だと納得するA。

しかし、少し変だ。

周りにあるベッドには誰も寝ていない。それは、明らかだ。この時間には全員出かけている、と言うよりかは、元から使われている形跡が一切ないのだ。しわ一つもなく、通路側に寄せて綺麗な長方形に畳まれた布団。個人スペースの棚や机には一切埃は無く、手入れされているものの、荷物等は何も置かれていない。

Aはある一つの考えが浮かび、血の気が失せた。

もしかすると、めちゃくちゃ長い間眠っていたのでは...⁉

だとしたら、最悪だ。

仮に長期眠っていたのであれば仕事がクビなのは勿論のこと、医療保険だって軽いものにしか入っていない。

一体、どれ程の額が請求されるんだ...⁉

Aは頭を抱えた。しかし、こうなった以上どうしようもない。取り敢えず話をしない事には何も始まらない。ベッドの柵に取り付けられているナースコールを押した。

ぼんやりと外を眺める。
これから大変な事になるのだ。今くらい現実逃避をさせて欲しい。

貯金を崩すどころか、借金しないといけないかもなぁ...

他の事を考えようにもマイナスな思考ばかりが脳内を占め、もう一度ため息をついた。