依存病人【d!】 (ページ12)

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雷電ページ12

男はAを見下ろした。

そこにいたのは身長をゆうに２メートルを超えている上、身体の周りには黄色の雷を纏った何かだった。かぶっている帽子によってその表情を詳しく確認することはできないが、帽子に押さえつけられカーテンのように垂れ下がっている髪の隙間から、二つの光がこちらを覗いていた。

あ、目が合った。

焦りからか、恐怖からか。Aは勢いよく起き上がり布団を首元まで持ち上げ、掴んだまま壁際に背をつける。背中がベッドの鉄柵にあたり、鈍い音を立てた。

動いた時の振動でか、棚の上に置いてあるペットボトルが左右に大きく揺れると、そのまま床に叩きつけられて、中にあった半分ほどの水が音を立てて大きくバウンドした。

相手を刺激してしまったのではないか。じわりと冷や汗をにじませるとAは即座に布団を頭から被り、目を固く瞑った。ひたすら静寂に耐える。

しかし、いくら待っても物音ひとつしない。
もしかして、興味がなくなって何所かへ行ってくれたのではないか…？

Aは少しの期待とともにゆっくりと顔を布団から下げた。

「ひっ⁉」

すると、先ほどまで扉の前にあった二つの光が目の前まで迫っていた。
驚いた反射でもう一度布団を引き上げようとする。しかし、急に強い力で奥の方へと引っ張られて思わず布団から手が離れて宙を舞った。

柔らかく温かなくらがりの中から一転し、日の注ぐ地上へと連れ出された。

「え」

声が漏れる。すぐさま一瞬の浮遊感が襲い、背中からシーツのかすれる音とスプリングの軋む音が聞こえた。
腹のあたりに圧迫感を感じる。

目の前で跨っている男の後ろには、天井が見える。ぐにゃりと視界が歪んだ。目頭が、燃えるように熱く熱を持ち、こぼれた熱がほほを伝う。

なんで、どうして。

思考が散漫する。追い詰められたAは目を固く閉ざしたまま懇願した。

「ごめ...なさっ...お願い...やめて！」

ベッドに縫い付けられた腕は骨がきしむ音を立てる程、強く掴まれていてびくともしない。
Aにのしかかる大きな体の持ち主は、目の前で震えながら涙を流すAを見下ろしながら、ずっと噤んでいた口を開いた。

「__________。」