依存病人【d!】 (ページ9)

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写真から視線を移し、私は自身の身体を見た。

腕や首元に布の当たる感覚はするが、全く動かせなかったりひどく痛んだりと言った症状はない。しいて言うならば、筋肉痛のような、じわじわとした鈍い痛みが全身にあるくらいだ。
写真を見るに、こんな怪我で済むはずがないのに。

彼らもAと同じ考えだったのだろう。

先程から、Aの方を何度か見ては怪訝な表情をうかべ、手を固く握りしめている者も何人かいた。
じくじくと泥水を煮詰めて喉奥に流し込んだ、そんな後味の悪さが襲う。そんな中、何処にもやりようのない苛立ちが募った。

きっとこれは、どうしようもない、定められた運命だったかのように思えた。

「本題、はここからです。」

先程の慌てた様子と違い、改まった態度で問うてきた。

覚悟はいいですか。とでも言いたげな視線で此方を見ると、ベットの横に備え付けられている、背もたれのない高さの調節できる丸椅子に、恐る恐る腰を下ろすと、への字にきつく閉ざしていた口を重たそうに動かした。

「あなたは、変異体によって運ばれてきました。」

変異体とは、先程述べていた依存病人の事だろう。

男はそのまま話を続けた。

「可笑しいんですよ。」

ひやり。巻いてある包帯にやけに異物感を感じた。

「あの個体はSクラスに相当するもの。暴走状態の時に、理性が残っているはずがないんです!」

「それが、あんな...‼...いえ、申し訳ありません。何しろ、前代未聞な事でしたので...」

いきなり声を荒げ、此方に掴み掛らんとする勢いで話す男。周りの人々が焦ったように諭すと、男はハッとし、軽く頭を下げて向き直った。
俯くと、何処からか取り出したハンカチで額をぬぐった。

落ち着きを取り戻している男の前に、四十後半であろう、中年の男が歩み出てきた。

そんな声が気にならない程に、Aは混乱していた。

運ばれてきた?

それは、つまり、あの時の目の持ち主に、と言う事か。
落ち着いたって、あの時は暴れていたじゃないか。

私が気を失ってから暴走が解けたとでも言うのだろうか。
そんな事、ある筈がない。