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なんや、こいつ全然魅力のない女やな。
鬱は常識である魔力のことを知らない、つまり学のないヤツだと思った。
しまいには人間やって...？ほんま、シッマが指名した魔物にしては、期待外れやわ。
魔力も知らんって事は魔法も使えんってことやん。邪魔やなあ。
にこりと笑みを浮かべつつ、心の中では愚痴った。
それから暫く洞窟内を探索するが、魔物どころか、生き物の気配すらしないことに鬱は気付く。
そして立ち止まると、大きく息を吸って叫んだ。
「全っ然おらんやん!!!!」
「コネシマ、あいつぅ...!!」
鬱は地団駄を踏む。
「まさか、普段働いていないからって、わざわざ僕を動かす為だけにここまで来させたんじゃ無いだろうな!!」
自業自得な気がする。
「はぁ、全く、とんだ無駄足だ。コネシマめ、どうしてくれよ....」
喋っていた鬱が、ある一点の方向を見て固まる。
Aもそちらへ顔を向けると、眼を見開いた。
「な、な!?さ、災害指定獣...!?」
目の前にはとぐろを巻く、巨大な蛇のような魔物。
長い舌を出すと、甲高い唸り声をあげて、鬱の方へと動き出した。
そうか!こいつが洞窟に湧いた魔物を全部やったんか...!!
明らかに自分の敵う相手ではない。溢れでる強者の雰囲気。其処に立つことですらままならず、写る景色が小さく揺れる。
圧倒的なその差に、鬱はか細く悲鳴を溢した。
「うあ”ぁぁ....こんな所で死ぬなんて嫌やー!!」
先程から見え隠れしていた、芝居がかった口調や声色はいよいよ剥がれ落ち、プライドなど等に放り投げ逃げる鬱。
Aは通りすぎていった鬱と蛇らしき魔物を追いかける。
洞窟の一番奥まで逃げたはいいものの、出口も入口も同じ通路である上に、今其処には自分を追ってきたモンスター。
閉じ込められた。
ジリジリ近付いてくる魔物に、壁に張り付きヒンヒンと情けなく叫ぶ鬱。
どうにかして逃げたいが、目の前には災害獣、置いてきてしまった丁度いい身代わり。
こんなんクソゲーやん。
鬱は独りごちた。
あっちの女の方行ってくれ、と懇願する。
しかし、恐らく魔力が殆ど無いであろう女と魔力のある僕。
どちら美味しそうかなんて目に見えていた。
ソイツは大きく口を開けて、今にでも飛び掛かろうとしている。
声をあらげて鼻水と涙を溢す姿はさぞ滑稽だろう。
嗚呼、こんなことなら仕事なんかサボってサキュバスなんかと遊んでればよかったわ。
迫り来るソイツを見ているなか、視界の端にいる、あの女と目があった気がした。
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作者名：myself | 作成日時：2021年8月10日 22時
