買いもの ページ3
「はぁ〜…」
心底疲れたといった様子で大きく溜息をついた。
「あいつら俺の言うこと全然聞かへん…」
昼下がり、人の声の響く繁華街の飲食店で、男は独りごちた。
男の脳内に浮かぶのは、自由放任、私利私欲の塊のような男。それに加え、忠誠心のない部下達。そして自分のことをまるで信仰しているかのような男。
ろくな奴が居らん。
もう一度、大きな溜息をついた。
席を立つと、何気なく広場の方へと足を進める。
何やら騒がしい。
なんだ、と覗くと、小太りの男が台の上に立ち大きな声で競りをしていた。
オークション
この街ではよくある催しだ。
森や洞窟など、一般人が手に入れるのが困難なモノを売り出す。それは、物体、生物でも構わない。
何時もはここまで人が集まることは無いはずだが、今日は、広場から溢れ、繁華街にもその人混みが溢れていた。
「今回は珍しい、ドラゴンの出品がありました！」
かかっている幕が下ろされると、硬い鉄のおりが現れ黒く勇ましいそれが姿を現した。
会場は熱気に包まれる。
こんなもん買ったら金が掛かり過ぎるわ。却下、却下。
男は興味を無くし、人の極力少ない、会場の横にある裏路地を通る。
「…ん？」
日をさえぎり陰鬱な雰囲気がある路地裏に、壁際に何かが置いてあった。
先程のオークションと同様の幕がかかっている。
これも売りに出されるのか。
なにが、おるんやろか
ぶわり、と男の好奇心に火が付き、燃え上がる。
そろりと幕の端を持ち、ゆっくり中を見る。
手足には鎖が繋がれ、アイツと似た格好をしているそれ。
「ヒト…！」
その時、男は電撃が体を走る感覚を覚えた。
絶対的な忠誠心に、余計な感情を持たない丁度いい立場。
こいつだ！俺が探してたんは…！！
勢いよく檻へと飛び付き、ビクリと肩が跳ね恐る恐るこちらの様子を伺うソイツを見て、口が自然と凹を描く。
反抗心は無く少しの恐怖と不思議そうに見つめてくるコイツ。
まさに希望の通り!!
沸き上がる興奮を押さえ、震える口でなんとか声を張り上げる。
「俺の名前はコネシマ。今日からお前は、俺の“駒”や。」
会場のオーナーである小太りの男に、片手から溢れない程度の金貨の入った袋を渡す。
その額に驚いたのか、男はコネシマに対していかにも、媚びています、といった具合の態度を取る。
お付きのものに叫ぶように命令して早急に檻から商品を取り出させ、首輪から繋がる鎖をコネシマへと差し出した。
ジャラリと金属同士が刷れる音が、足を進める度に響く。
精々役に立ってくれよ？
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作者名：myself | 作成日時：2021年8月10日 22時
