CODE.6_神さまが死んだ日 ページ8
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ボーダーに入隊したばかりの頃の明智Aには、誰も寄り付かせないオーラと危うさがあった。
そもそも彼女のボーダー入隊のきっかけは、今から3年ほど前、彼女が中学一年生の冬に迅悠一と出会ったのが始まりである。
「キミ、この間も来てたってね」
当時警戒区域に何度も赴いていた彼女に付き添った迅が、何をするわけでもなく街だった場所を歩く背中にそうやって声をかけたのが一番最初だった。
初めは反応すら返さなかった彼女だが、のちに当たり前のようにそこにいた迅と少しずつ会話を切り開いていった。
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『__私はあの日のことを何も知りません』
何度目かの一方的な会話を重ね続けたある日、徐に口を開いた彼女から迅が初めて聞いた言葉はそれだった。独り言にもとれるような声量で吐き出されたのは彼女の命そのもののようだった。
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Aは第一次大規模侵攻の惨状を知らない人間であった。たまたま幼い頃から打ち込んでいた射撃の大会で他県に赴いていたためだ。
その被害に巻き込まれた両親とは死体にすら会わぬまま訃報だけを聞き、会ったこともない親戚に引き取られてからは三門に帰ることもボーダーの存在を知ることもなかった。
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三門から離れている間、彼女はあの日の全てを遮断していた。
親戚も勿論話題に出すことはなかったし、迷惑をかけぬようにと勉強に勤しみ、家の手伝いをし、射撃の腕と優秀な成績で全寮制の学校の特待合格を掴んだ。
ただ無意識に、自分の価値が無くならないようにとあらゆるものを必死にかき集めていた。
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「__他人を助けられる人でありなさい、そうすれば大切な人を守ることにも繋がるから」
それは彼女の両親の口癖であり、そしてのちの明智Aという人間にとっての呪いのような言葉でもあった。
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『家族すら守れない人間に酷なこと言いますよね』
__そもそも手を伸ばすことすらできなかったのに、と彼女は言った。
大規模侵攻から約1年半の時を経て初めて三門に赴いた時、彼女はそう思う他なかった。
まずその土俵にすらいなかったのだ。街ゆく人々は前に進んでいると言うのに、それすら叶わない。
ただ宙を浮かぶだけの、何でもない存在。何もできない、意味もない。
どんなに勉強や部活に打ち込んでも、彼女の身体を支配するのはどこにも追いやることのできないこの呪いだけであった。
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26(ふむ)(プロフ) - 佐藤花子さん» こんにちは、初めまして。コメントありがとうございます。丁寧な感想とても嬉しく思います。これからもしばらくはちまちまとした更新になるかと思いますがどうぞ宜しくお願い致します。 (2021年8月18日 17時) (
レス) id: 5b80796d59 (このIDを非表示/違反報告)
佐藤花子(プロフ) - この作品で初めて貴方を知りました。単刀直入に言いますがとても素晴らしい作品です。言葉選びと丁寧な文章が一つ一つの言葉の魅力を引き出していて素敵です。これからも更新期待しております。ご自身のペースで更新していただければ幸いです。長文失礼しました (2021年8月17日 20時) (レス) id: 2f5d72a0f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：26(ふむ) | 作成日時：2021年5月21日 19時
