CODE.17_遅効性のアンサー ページ19
▽
『京介好きな人いる？』
「………急だな」
何の脈略もなく目の前の彼女から発せられた言葉に、烏丸京介は内心驚きつついつものポーカーフェイスを貫いて返事をした。
彼女__明智Aの口から恋愛の話が出るのは結構珍しい。
それこそいつも周りにいる佐鳥やら、二年の先輩__米屋や出水、それに便乗して加わる緑川やらの方がそういった類の話をするのではないかと言うくらいだ。
一言返してから黙ったままの烏丸を特に不思議に思うこともなく、彼女は前に佐鳥に聞かれてと質問に至った経緯を話し始める。
それにやはり発端は佐鳥か、と納得しつつ烏丸はそうだな、と目線を左から右へ流してから彼女の瞳を捉えた。
「……A」
『何？』
「じゃなくて、好きな人」
『ほう、…………ン？』
「すごい顔だな」
烏丸からの返答にこれは想像してなかったのか、Aは一瞬遅れて理解した後にそれは本気で言っているのか否か、と言う顔をわかりやすく表に出した。
彼女は基本的に表情が変わらない方である。だがこうして烏丸と話すときは意外ところころ表情を変えるのに彼は優越感を覚えていた。
「__まあ、良くしてくれる人たちは皆好きだな」
『…………！』
烏丸が付け足しと言うように呟けばAははっと眉を寄せて彼を見る。
『…京介ほんとやらしーね』
「出水先輩みたいなこというな」
『そう言う意味じゃない』
ああは言ったものの、答えがお気に召さなかった様子の彼女に烏丸がこれでもかと言うほど優しい目を向けているのを誰も知らない。
自身に向けられる好意には殆ど気が付かない彼であるが、明智Aに対するこの己の感情は恋なのか、と聞かれればおそらくそうであると答える。
それは彼女以外の女子に対する感情との比較であったり、彼女から自身以外へ向けられる感情への引っ掛かりから導き出された答えであるが、元より恋愛体質ではない彼からすると家族愛の延長のようにも思えていた。
「Aは？」
『何が？』
「好きな人。いないのか」
烏丸からの同一の質問に彼女は一拍おいてにやりと笑った。
『京介』
「………」
意趣返しか、どこか得意げな様子で言い放った彼女を見て烏丸は先程の彼女を思い出す。
____なるほど、やらしいなこれは。
烏丸はただ無言で彼女をどう自身の元に収めようか考え始めていた。実際は初めから鳴りを潜めていた家族愛などという言葉が完全に消え去ったことを、彼は知らないままである。
.
CODE.18_積み上げられた方程式→←CODE.16_足りないものさがし
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 466人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
26(ふむ)(プロフ) - 佐藤花子さん» こんにちは、初めまして。コメントありがとうございます。丁寧な感想とても嬉しく思います。これからもしばらくはちまちまとした更新になるかと思いますがどうぞ宜しくお願い致します。 (2021年8月18日 17時) (
レス) id: 5b80796d59 (このIDを非表示/違反報告)
佐藤花子(プロフ) - この作品で初めて貴方を知りました。単刀直入に言いますがとても素晴らしい作品です。言葉選びと丁寧な文章が一つ一つの言葉の魅力を引き出していて素敵です。これからも更新期待しております。ご自身のペースで更新していただければ幸いです。長文失礼しました (2021年8月17日 20時) (レス) id: 2f5d72a0f8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：26(ふむ) | 作成日時：2021年5月21日 19時
