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気まぐれな救世主は保証人を知らぬ 1 ページ3

まぁ、最初は何かの気まぐれでしたよ。そりゃそうでしょう。そんな心が働く時だってあるでしょう?
だから、見るからに怪しいと思う心を抑えて、路地裏に寝っ転がるその男を片手で支えるようにしたのだ。

むにゃむにゃ零す半開きの唇は女の私が見てもびっくりするくらいカサカサで、酒臭い寝息が周りの空気を汚していくレベルで臭い。まぁ酔っ払いなんてこんなもんか。我ながら赤の酔っ払いを助けようなんてすごい正義感を装ってしまったみたいだが、まぁ気にしないことにしよう。
オレンジの髪に同色のパーカー。黒が入り交じるように入っていてもこの真夜中独特の闇に飲まれておしまいだ。明るいところで見たら高そうくらいには思うかもしれない。

「…あの、起きた方がいいですよ。」

なんだかよく分からない声を掛けてしまった。未だ一ミリも覚める気配の無い彼にどことなく見覚えを思い出しながら肩を揺すり続ける。
どんだけ飲んだんだろうこの人。もう夜の3時だ。この時間に路上で寝てるなんて、どんな映画だろうか。ラブストーリーなんてもんじゃないよ。私は善意でやってるんだから。

…会社が潰れて一年半。私は派遣で命を繋いでいるから。なんとなく、こんな人生終わった感満載な若者に同情してしまう気がある。
もちろん我ながらとんでもない馬鹿だとは思っているが。

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作者名:枯成湖 | 作成日時:2020年5月26日 11時

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