600万の酔いどれ (ページ11)

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気まぐれな救世主は保証人を知らぬ　最終話ページ11

女の子をパシリにしてまでコーヒーが飲みたかったわけじゃない。
古めかしいベンチに座り直してちょっと痛かった膝を摩った。向こうから歩いてくるちょっと小さな姿に想いを馳せる。
虫さんとは違って柔らかそうな全身。でもちょっとがしっとした腕、足。陸上やってたのかな。営業部とか？仕事って言ってたけど、よく見たら顔も体もボロボロだった。相当こき使われてるんだろうな。俺らとyoutubeやりゃええんに。いやそれが出来ないから仕事してんのか。

…いや、出来るのでは。出来るのでは？出来るのでは？？

出来るな。これ。出来るぞ。
だって借金だ。借金が全部悪いんだ。
そのせいであの子は、仕事に苦しめられ俺にちょっかいかけられ、今コーヒー買ってる。
じゃあそれをなくせばさ。俺んとこずっといるし、なんなら仕事手伝ってくれるし、そうだ。
そうしよう。そうしよう！

「お待たせしました。どうぞ。」
「あぁ…あんがと。あちっ。」
「あ、冷たい方もありますけど。こっちにします？」
「んん…」

ほら。こんなに気が利くしさ。可愛いしさ。

なんか、あれだな。俺今酔っ払ってんのか。

「ねぇ、借金ていくらなん？」
「はい？」
「教えてよ、ここの馴染みだし。」
「いや意味分からん。」
「ええやん！お願い！！」
「そんなに頼み込むことですかね…」
「うん。知りたいの。」
「…まぁ…あと600万とか、そこらへんです。」

うん。なるほど。
まぁ、いつかのシャンパンタワーよりは高くない。

「あげるよ、600万。」
「…うぇ？」
「だからさ、」

俺と居てよ。

救世主は保証人を知らぬ終劇