世界の片隅で僕らは出会う。 (ページ8)

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『...またライブ行くね。今度あの曲やってよ。』

「やってもいいけど、なんで来るの？」

『関係がなかったら来たら駄目なの？』

「違う。音楽に興味が無いのになんで来んの、って意味。」

関係がなかったら？最初から俺らにそんな物ないのに。いらないのに。
周りは当たり前のように彼女を姉。俺を弟と口にした。

『___何ででしょうね。あんたの顔を見たくなるからかしら？』

「俺のこと好きなの？」

『殴るわよ。』

キッ、と睨まれて、思わず逸らしてしまった。

『...じゃ、あたしそろそろ帰るわ。』
ベランダの小さなホコリを足の裏に付けたまま彼女はリビングに戻っていく。

「もう外真っ暗なんだから泊まってけば？」

『やだ...一人暮らしの男の家に...？』

「阿呆か。」

『やだ。冗談じゃない。とにかく今日は帰る。』

頬を膨らませて彼女は靴を履く。

開いたドアからは春にしては少し寒い風が流れてくる。

『...またね。寛之』

「じゃあな。姉ちゃん」

『なにそれ。あんたはよそから来た血の繋がってない子供でしょ？』

『...もっといい子が来て欲しかった。』

目線を下げて彼女は呟いた。

『...あんたも、もっといい人のいる家に行きたかったでしょう？』

何も言うことが出来なくて、彼女を見つめていると、彼女は優しく微笑んで家を出ていった。

バタン、とドアが閉まってさっきまで騒がしかった部屋に静寂が訪れる。

___その寒い風は、やがて雨を通り過ぎて雷を連れてくるのだ。

【通り過ぎ去って】

3月のライオンに影響されすぎた。