世界の片隅で僕らは出会う。 (ページ11)

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雨上がりの夕暮れ dros磯部ページ11

「...Aちゃん？」

前方に、空を見上げて口を開けているAちゃんの姿が。

近付こうと思うと、彼女の頬に一筋の涙が流れていることに気づいた。

何かあったのだろうか。

あまり踏み込まない方がいいと思って、彼女から目を逸らして歩いていくと

『...ヒロさん？』

あぁ、どうして。踏み込まない方がいいと思って気づいてないふりをしたのに、なぜ彼女から話しかけてくるんだ。
振り返ると、さっき見たものは嘘だったかのように彼女は微笑んでいる。

それに驚いて何も言えずに彼女を見つめていると、『ヒロさん？』と顔を覗かれた。

「あっ、ごめん。偶然だね。Aちゃん」

『ほんと偶然ですね。こんな街中で会うなんて』

俺の見間違いだったのだろう。彼女は何も無かったように俺と話している。

『良かったらカフェでも行きませんか？久しぶりにお話がしたいので。』

「いいですよ。近くにおすすめのカフェがあるんで。」

おすすめのカフェへ彼女を案内し、2人分のコーヒーを頼んだ。

届いたコーヒーカップを見つめる彼女は、やはりどこか様子がおかしくて何があったのか聞いてみることにした。

「...何かあったの？」

『あっ、すみません。実は彼氏と別れて。』

彼氏と別れた。その言葉を聞いた瞬間、最低ながら喜んでしまっている自分がいる。

本当は慰めの言葉をかけた方がいいのだろうけど、何も言葉が浮かんでこなくて気まずさで俺もコーヒーカップに目を向ける。

『...ごめんなさい。こんな話しちゃって』

「いや。俺から聞き出したんだから。謝んないでよ」

まだ未練があるように目に涙を浮かべる彼女。

新しく恋が始まることに胸が高鳴る俺。

正反対の感情を持つ2人が共に過ごす、雨上がりの夕暮れ、カフェ。

「またいつでも話聞くから。また誘って。」

『...はい！』

【雨上がりの夕暮れ】

(誘われなくても誘うけどね。)
(えっと...待ってます。)