ウタヘタアイドル【SVT】

カメラロール ページ36

ウジside




色々切羽詰まった作曲作業


やっと決まった念願のデビュー


俺以外の13人の命運




好きで始めた作曲に、やりたかった自己プロデュース




それらがこんなにも苦しいことに気がついてしまった



考えれば考えるほど、うまくいかない曲作り



あー、やめだやめ

今日は多分、というか絶対進まねえ



諦めて宿舎に向かう道のりで考えるのはメンバーのことばかりだった















電気の消えた宿舎、


流石にこの時間だ、全員寝てるだろう



そう思い
足音を顰めてシャワーを浴びに直行する



洗面所の電気をつけたその瞬間



『ひょん』



…っ！！びっくりした、


そこにいたのはうりまんねゆり



「なんだよ、まだ寝てなかったのか」



『うん、ヒョンを待ってました』



「なんかあった？」




『あの、写真を撮りたいです。いいですか？』


は？写真？


怪訝な顔をしてしまっていたのだろう


ずいっと押し付けられたのはスマートフォンの画面


写っていたのはスングァンのピン写だった



ゆりがスワイプするとどんどん出てくるメンバーのピン写



『ヒョンだけ、まだ』



あー、なるほど今日買ってもらった携帯電話でメンバー全員の写真が撮りたかったってこと？



「今？明日でもよかったじゃん」



『今日撮りたかったです。だからヒョンを待ってました』



けんちゃなよ？

と首を傾げる姿に思わず頷いてしまった




嬉しそうにカメラを構えながら、ポーズを要求してくる


ポーズはなんでもいいみたい




無難にピースで撮り終わった写真を見せられ適当にOKを出す




大切そうにメンバーの写真をひとつづつ選びお気に入りに追加する姿が幸せそうに見えた


『ありがとうございます、ひょん。写真大切にします』




日本人特有の可愛い発音


初めての携帯電話にワクワクしているその姿



「早く寝な、背伸びないぞ」




『ひょんも』


なんて悪戯そうに笑って戻っていく姿






ああ、なんか、うん

大切にしたいな



このメンバーを


チームを組めたこの奇跡を


ここまでの軌跡もすべて




「あっきんだ」






シャワーを浴びながら自然と出たその言葉


久しぶりに降りてきたメロディーを書き留めたくて


俺はもう一度作業室への道を辿った

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