奇跡と、魔法と、それから絶望 ページ10
「は……はッ、は…………ふ」
「今日は随分と乱暴な戦い方だったね」
魔女の結界が消え、乱れた呼吸を整えていると、背後からひょっこりキュウべえが現れた。
「あの少年────緑谷出久に言われたことが、そんなに響いたかい？」
「ッうるさい、その名前を……出さないで」
「やれやれ、人間というのは本当に難儀な生き物だね」
実際、この毛玉が言うことは事実だった。
戦いに集中出来ず、無駄に魔力を消費したせいで、ソウルジェムに溜まった穢れもいつもより多い。
幸い、倒した魔女がグリーフシードを落としてくれた為浄化できたが…これではだめだ。
このままではいけない。
彼は私の邪魔をしないと思ったから、冷たい言葉こそ投げかけても、本気で遠ざけようとはしてこなかったが、それも今日までだ。
友達にそうしたように。
先生にそうしたように。
爆豪勝己に、そうしたように。
彼とはもう関わらないようにしよう、無関心になろう。
痛みも憂いも悩みも、私には…魔法少女には、いらない。
なにも。
いらない。
魔法少女に必要なものは、奇跡と、魔法と、それから─────
「まだ粘るのかい」
暗がりにぼんやりと浮かぶ、キュウべえのマゼンタの双眸。
「………」
「夢やぶれ、馬鹿にされ、周囲とも関わりを絶ち、それでも君は、諦めを拒む」
諦めを、拒む？
キュウべえにはそう見えているのか。
自分の中では、なにもかも諦めたつもりだったのだが。
「いつ絶望に身を委ねても仕方ない状況だと思うんだけどなあ、君は。そこまで必死になるのは、君なりのこだわりなのかい？」
「…こだわり、じゃないわ。これはきっと、
執念よ」
『魔法少女』は決して絶望なんかしない。
どんなにぼろぼろになっても、『魔法少女』は絶望するわけにはいかない、だって、そうしたら、救える命も救えない。
命を賭して、ひとを救う。
そんな『魔法少女』になるために、私はキュウべえと契約したのだ。
『私』はどうなったって構わない。
でも私という『魔法少女』がこの街から減るわけにはいかないのである。
ヒーローになれないなら、せめて、それくらいは、貢献したい、なんて。
「まあ、気長に待つよ。君の『その日』を」
キュウべえは溜め息をついて、消えた。
「は……どこまでも、利益しか興味のないやつ」
勝己は私のことを諦めのつく大人だと言ったけれど、違ったみたい。
私はまだまだ子供で、そして、大人になれず死ぬ。
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えす(プロフ) - めちゃめちゃ面白いです…！！！更新待ってます！！！！！ (2022年6月14日 15時) (
レス) @page22 id: b60a07d35d (このIDを非表示/違反報告)
maria - 面白いです (2022年4月13日 0時) (レス) @page22 id: 2d8c9edfbf (このIDを非表示/違反報告)
リヴ - とても面白い作品です！！更新楽しみにしてます！ (2020年3月29日 14時) (レス) id: 9de3fc0d23 (このIDを非表示/違反報告)
無月(プロフ) - 更新楽しみにしてます！頑張ってください！ (2020年3月22日 21時) (レス) id: c11dc81bfb (このIDを非表示/違反報告)
ますくれもん - あぁ出久君行っちゃダメ！！！魔女がぁあ！！！魔女がぁあ！！！ (2019年6月2日 3時) (レス) id: 35498019b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：水葬 | 作成日時：2019年4月28日 3時
