記憶のぬるま湯に浸かってｰ青ｰ 呪 ページ20
「月ちゃんはすごいよね、自分が無個性って知っても…全然変わらないんだもん」
そんなことない。そんなことないのイズ。私だって本当は、不安で不安で仕方がないの。
もうヒーローになんかなれないんじゃないかって。
でも、態度に出したら『本当』のことになっちゃう。
だから私は、笑顔の仮面を貼り付ける。笑っているやつが一番強いって、オールマイトが言っていたでしょ？
「ぶっ叩いてもぶっ叩いても泣かねぇ、気持ち悪ぃ女！」
そうだね。気持ち悪いよねかっちゃん。私もそう思う。
だって、この仮面、もう取れないの。剥がれないの。
いつだって、笑っていなきゃ。ヒーローは、笑顔でみんなを救うんだ。
そう思ってた。だから、私は私の気持ちに蓋をした。
笑顔でいられれば、自分の感情なんて二の次だって。
「どうかな？きっ、きみのお母さんお父さん、死んじゃったけど…いっ、今の気持ち、聞いてもいい？ねえ、聞いてもいいかな、ねっねえ、悲しい？」
「…………っ」
目が血走った細身の男が、私の顔を掴んで壁際に押さえつける。
『敵』か。手足が動かない。この人の個性だろうか。
目の前に広がる、血の海。お母さんとお父さん『だったもの』。
「あっ、まっまあ死んじゃったと言っても、ぼっボクが殺したんだけどね、えへへ……あ、ああ。面白くなかった？いまの、いっ一応ボケたつもりだったんだけど、な」
おきて、おきてよ、お母さん。お父さん。
なに寝てるの。嫌だよ。私をひとりにしないで。
「悲しい？悲しい、よね？あれれ？おっおかしいな…おかしい？な？両親が死んだら悲しい？悲しいよね？でも、きみは泣いてない、どうしてだろう、かっ悲しいと泣くよね？ね？」
あ、れ？
てっきり私は自分が泣いてると思っていたのに…泣いてないのか、私は。
いや、泣けない。私はヒーローになるんだ。
そしてお母さんお父さんを、幸せに…あれ？
できない。
だってお母さんとお父さんは死んだ。
あれれ、じゃあなんで私はヒーローに？
夢だから？夢ってなんだっけ。
憧れだから？憧れってなんだっけ。
わかんない。わかんない。もうなにもわかんない。
でも、ヒーロー、ヒーローにならなきゃ、私、私が生きる意味は、
「プロヒーローだ！その子を離せ！」
玄関が開け放たれて、眩しい光が差し込む。
誰かが通報してくれたのか。あとはヒーローに任せれば…なんとかなる。意識を手放した。
その時の私は、笑っていたという。
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えす(プロフ) - めちゃめちゃ面白いです…！！！更新待ってます！！！！！ (2022年6月14日 15時) (
レス) @page22 id: b60a07d35d (このIDを非表示/違反報告)
maria - 面白いです (2022年4月13日 0時) (レス) @page22 id: 2d8c9edfbf (このIDを非表示/違反報告)
リヴ - とても面白い作品です！！更新楽しみにしてます！ (2020年3月29日 14時) (レス) id: 9de3fc0d23 (このIDを非表示/違反報告)
無月(プロフ) - 更新楽しみにしてます！頑張ってください！ (2020年3月22日 21時) (レス) id: c11dc81bfb (このIDを非表示/違反報告)
ますくれもん - あぁ出久君行っちゃダメ！！！魔女がぁあ！！！魔女がぁあ！！！ (2019年6月2日 3時) (レス) id: 35498019b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：水葬 | 作成日時：2019年4月28日 3時
